「日本人は『天皇家の結婚・出産』を目標にしてきた」
天皇は日本国民にとって「憧れの中心」である――。明治維新までの庶民は天皇を知らなかったという俗説もあるが、敗戦後に金森徳次郎大臣が帝国議会でそう繰り返した通り、古くから日本人は皇室への憧れを抱いてきた。
具体例として、江戸時代中期に庶民にまで広まった雛人形が挙げられる。天皇・皇后を模した人形は、いうまでもなく京都の雅びやかな宮廷文化への憧れを具現化したものである。
神前結婚式も代表例の一つといえる。明治33(1900)年に挙行された皇太子嘉仁親王(※後の大正天皇)の婚儀の後、同様の式を挙げたいという機運が国民の間で高まった。そして皇室の儀礼を参考にして定められ、全国に普及したのが今日の神前式なのである。
このように国民の側もまた、憧れの対象である皇室から影響を強く受けてきたのであり、それは夫婦のライフプランにまで及んだ。『女性自身』元編集長である櫻井秀勲氏は、自著『皇后三代』の中でこう述べている。
日本人はこれまで、天皇家の「結婚と出産」を目標にしてきた、という話があります。「何歳で結婚されたか、子どもの数は何人か」を真似るというのです。
――『皇后三代』(きずな出版、2019年)122頁。
なお、海外君主国においても同様の傾向があるのかもしれない。イギリスの人口統計学者であるポール・モーランド氏も、前英女王エリザベス2世がエドワード王子を出産した時期に出生率が向上したことなどを念頭に、次のように語っている。
「もしも人々にもっと子どもを持つことを奨励したいのであれば、王室は潜在的な模範になりうるのです」
「それでも東アジアではまだマシ」という現実
東アジアを見渡せば、中国・台湾・韓国の少子化はさらに深刻である。比較できるデータが揃う2023年のものを見ると、合計特殊出生率は、わが国が1.20だったのに対して、中国が1.00、台湾が0.87、韓国が0.72であった。
人口問題を政治家のせいにしたがる人々もいるが、東アジアに限らず世界的な傾向であることからすると、政治の失敗というわけでもないのだろう。それでは、いったい何が原因なのか。思い出されるのが2022年1月、前ローマ教皇フランシスコが次のように述べたことだ。
「多くの夫婦が、子どもは欲しくないからつくらない、あるいは一人しかつくらない、しかし2匹の犬や2匹の猫を飼っているのです。そう、犬や猫が子どもの代わりとなっているのです」
フランシスコ前教皇は2024年にも「子どもよりペットを好む人もいる」と嘆いて一部で物議を醸したが、あながち間違いでもあるまい。たくさんの子どもを育てられるほどに経済的余裕はあるけれども、煩わしいから一人もいらない――そんな人々は実際に少なくないのである。
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