「キュッキューで」という柳井社長の一言で生まれたジーユー(ユニクロのセカンドブランド)の990円ジーンズ。2009年3月に販売されると、常識破りの価格に加えてスタイルがよく見える点も受け、年間販売数を100万本に上方修正した。リピーターも目立つこの商品、激安の理由には、第一にこれまで築いてきたSPA体制が挙げられる。
企画、製造から物流、販売までを一貫して自社で行うことで中間マージンを圧縮、在庫コストも低減と、ここまではユニクロのSPAと同じ。ユニクロのジーンズの中心価格は3990円である。これでも十分安いが、その4分の1。一体何が違うのか?
「高品質にこだわるユニクロに対し、低価格を重視した」というのはジーユーを運営するGOVリテイリングの中嶋修一社長。世界中から「990円」を実現できる工場を探した結果、素材はバングラデシュでつくり、縫製は工賃が安く通常9%かかる関税が不要のカンボジアで行っている。
素材調達や工場の生産管理等はユニクロの生産本部に委託している。企画やデザインにはユニクロのR&Dデザイン部の力を借り、商品力を上げた。
「品質は担保します。厳しいテストを繰り返し着心地にも配慮している」(中嶋社長)
販売面でのコスト効率も徹底している。まず、店舗の従業員数は平均でユニクロの半分、坪当たり商品点数はユニクロの倍と人件費を抑えた。たとえば西葛西店では773平方メートルの売り場に従業員は平均七名。少人数で対応するため、随所に工夫が施されている。そのひとつは陳列方法。
「畳み陳列の多いユニクロに比べ、ジーユーは吊るし陳列が全体の8割。これで商品を畳み直す手間が格段に省けている」(同)
週末ごとにレイアウトを変更するなど、店舗では什器の組み立てや取り外しが頻繁に行われるが、ここにも仕掛けがある。
「ユニクロの陳列棚はトンカチを使って打つ、外すという作業を2人がかりでやるんです。でもうちの棚は女性1人でもパコッと外したりはめたりできるよう簡易になっています」(同)
販促に至ってはテレビCMはゼロ、店舗のあるエリアへの折り込みチラシだけだ。店頭にはジーンズ以外にも490円Tシャツなど激安価格のオンパレード。商品の8割はユニクロの半額なのである。
「値を張り替えるには人件費がかかるし何より利益が下がる。最初から最終価格を提示し、定価で売るのを目指しています」(同)
「キュッキュー」はエブリデー・ロープライス戦略の賜物なのだ。
※すべて雑誌掲載当時