「自分を変える特別な体験」を提供できるか
父親の仕事の関係で、小学生時代はレバノンのベイルート、高校生時代はオーストリアのウィーンで暮らし、グローバルな社交の場に身を置く機会に恵まれた山田理絵氏。大学卒業後フジテレビに入社、報道記者を経て社長室付となり役員の海外賓客との社交をサポートした。こうした経験を生かし、現在は夫・長光氏とともに都市の競争力を高める研究機関「アーバン・キャビン・インスティテュート」にて、グローバルリーダーを対象にさまざまなプログラムを講ずる。そのひとつに「ハイエンドトラベル」がある。
全世界で年平均6.4兆円の成長が見込まれ、2022年には約127兆円に達すると予想されるのがハイエンドトラベル市場。世界の旅行者のわずか3%のハイエンドトラベラーが旅行消費全体の4分の1を占めるという調査結果もある。本書で山田氏は、そうしたハイエンドトラベルの現状を先進事例、価値創造のヒントとともに解説する。
山田氏によれば、ハイエンドトラベルの起源は16世紀の英国で始まった「グランドツアー」にあるという。
「当時の貴族や上流家庭は教育の仕上げとして、生き抜く力と教養を身につけさせるため、子供を旅に出しました。子供たちは見知らぬ土地で視野を広げ、社交術を磨きながら、その地でしか得られない特別な体験を持ち帰る。これがグランドツアーです」