お金を出せばほとんどのものは買うことができる――そんな一生お金に困らない大富豪たちは、最後に何を求めるようになるのか。モナコ在住の著者が富裕層との生活の中で見た答えとは。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Oleh_Slobodeniuk)

“モナコ基準”の審査とは

モナコに住んでいる人たちは、他国と異なる“モナコ基準”の審査を通過した人たちです。通常外国人が海外に住む場合、住居と銀行の残高証明か現地での雇用契約書が必要になります。これらはどこの国に移住する場合でも最低限必要となる書類ですが、“モナコ基準”というのは、国の物価が高いため、例えば住居を用意するだけでも、20㎡で最低2500€(約31万円)からといった条件です。それも物件が空いていればラッキーなほうで、この手のワンルームはほとんど空きがありません。ちなみに購入する場合は、20㎡のマンションで約2億4000万円からと言われます。

また、銀行口座の残高証明も、数千万円から億単位が必要になります。これは個人によって条件が変わるため金額に幅があります。またモナコの場合は、無犯罪証明書の提出も義務付けられています。住むだけでこれだけの金額がかかるのですから、会社を立ち上げようと思うと、日本のように簡単な手続きだけではないことが想像できるでしょう。

お金で買うことができない価値あるもの

このような条件をクリアした金銭的に余裕のある人たちが、本当に手に入れたいものは、お金で買うことのできない、人生に価値を与えてくれるものです。例えば「健康」。これはただ単に元気はつらつと生きるための健康でなく、美貌も含めた健康です。日本は長寿大国として世界的に有名で、WHO世界保健統計2018年版によると、日本は世界平均寿命ランキング1位。男女の平均寿命は84.2歳だそうです。数字で見るかぎりは素晴らしい結果ですが、実際の健康状態やライフスタイルはどうなのでしょうか。病院で長く過ごしたり、医療に頼って生かされているというのも現状でしょう。また、元気にされている方でも、男としての自分、女としての自分は失くし、恋愛など考えたこともないケースも多いはず。

モナコで求められる「健康」とは、このような状態を指すのではなく、年を重ねても女性は女性、男性は男性でいることが絶対です。ただ日々を長く生きるというのではなく、家族、恋愛、社交など人生を謳歌するために健康を手に入れたいのです。

健康のためにオリーブ畑を購入

このように人生を謳歌しつつ長生きするという意識が高いため、すべての年齢の人たちにとって、「食」は毎日の欠かせない重要ポイントになります。健康は「食」からと言われるように、何を口にするかで身体がつくられるため、モナコのスーパーマーケットは専門店へ行かなくても、必ずオーガニックの棚があり、その棚が年々広くなっています。通常の商品より2~3割高くなりますが、健康のためにオーガニック商品を選ぶ人が増えているのが現実です。他にも、この辺りはオリーブの樹がたくさん育っているため、料理にオリーブオイルを使うのが主流。健康意識の高い人はオリーブ畑を購入し、自家製オリーブオイルもつくります。さらに家の庭には普通にオレンジやレモンの樹があり、毎朝フルーツの生絞りを飲む人も多いのです。