<strong>ユニクロ銀座店店長・松本晃明</strong>●1972年生まれ。95年ファーストリテイリング入社。スーパーパイザー等を経て2007年より現職。
ユニクロ銀座店店長・松本晃明●1972年生まれ。95年ファーストリテイリング入社。スーパーパイザー等を経て2007年より現職。

ユニクロで国内最大級の売り上げを誇る銀座店。売り場面積450坪に、常時20~30名が働く。松本晃明店長をはじめ2名の副店長、各階にフロア店長がおり、パート等を含め総勢約200名が在籍する。

松本店長はスーパースター店長である。店長、スーパー店長、スーパースター(SS)店長と大きく分けて3段階ある店長職でトップのランク。全国約760店舗中、SS店長はわずか十数名で、発注、販売計画、人事のほぼすべてを決定できる権限がある。

「たとえば発注。通常の店舗なら商品は自動発注ですが、銀座店は自分たちの計画で商品を入荷できる」と松本店長。SS店長となれば、社内のどこにでも出入り自由、柳井正会長兼社長の指示も直接仰げる。

「ユニクロでは、一人ひとりの日々の作業計画が明確。売り場の陳列整理、レジ、品出し等、どのフロアに何人販売員がいて、何をしているかが15分単位で計画されている。毎週月曜日、フロアの人事担当者が1週間分の稼働計画を作成するのです」

作業によっては秒単位で時間が定められているものもある。たとえば裾上げ。糸をほどくのに何秒、縫うのに何秒と決まっている。これはスピード感覚と顧客第一を全スタッフに浸透させることが目的だ。

「販売のベースはセルフサービスですが、必要とされるときには即適切な対応をするよう努めています。多いのは在庫問い合わせです。このときも検索してあるかないかをただ答えるのではなく、在庫があるならその商品と合うものを提案する。品切れの場合は類似商品を紹介する、ご自宅近くの店舗の在庫を探すなど、お客様のための最善策を考えて実行するようにしています」

<strong>他社と比べても圧倒的な販売効率を誇る</strong>:役員、店長からアルバイトにいたるまで個々人が無駄のない動きをしているといえる。さらに、レイアウトや陳列の工夫で売り場の販売効率も高い。

他社と比べても圧倒的な販売効率を誇る:役員、店長からアルバイトにいたるまで個々人が無駄のない動きをしているといえる。さらに、レイアウトや陳列の工夫で売り場の販売効率も高い。

権限を委譲されるということは、責任も引き受けるという意味である。

「店舗には月次と日次の売り上げ目標がある。売り上げは15分単位で確認でき、何時時点で何%を超えていれば目標を達成できるかが徐々にわかってくる。未達になりそうなら休憩をずらすなどしています」

ファーストリテイリンググループの経営理念の最初には「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」とある。

「お店、商品、従業員、売り場がお客様中心でないと、いま業績がよくてもいつ潰れるかわからないという危機感がある」(松本氏)

理念を共有するため、毎日朝礼で「基本方針と3つの約束」を唱和する。よい仕事をすれば褒め、約束を守らなければ叱る。当たり前のことを徹底することで一人ひとりの力が磨かれ、業績へとつながっていく。

※すべて雑誌掲載当時

(澁谷高晴、市来朋久=撮影)