インターネット調査会社マイボイスコムによれば、20~40代女性の9割以上がユニクロを利用しているという(2009年1月調査)。女性はどこに惹かれているのだろう。

「衣料に関して女性が『嫌だ』『不便だ』と思っていた問題をすっきり解決してくれるのがユニクロ」とはマーケティングに詳しい慶応大学大学院の須藤実和教授。健康飲料「黒烏龍茶」をヒットさせたサントリーや、ウオーターオーブン「ヘルシオ」を開発したシャープ同様、ユニクロは顧客のアンメット・ニーズ(潜在需要)を掘り起こし、商品化するための仕組みを備えていると須藤氏はいう。

「ユニクロは、女性の1日の行動を細かく区切って、その中でのアンメット・ニーズを徹底的に洗い出して商品化しているといえるのではないでしょうか」

ヒートテックやブラトップは潜在需要に応えた象徴的な商品だ。ヒートテックは東レと素材から共同開発し、昨シーズンには2800万枚を売り切ったインナーである。徹底的に市場を調査し、「アウターに響かない薄さ」「肌触りの柔らかさ」「保湿保温機能」「脱ババシャツ」という消費者のアンメット・ニーズに応えた。

ブラトップはブラジャーとキャミソールの一体型商品だ。08年に300万枚を売り上げ、今年は900万枚を投入する。ブラトップの登場は、女性が持っていた「ブラジャーの窮屈さ」「キャミソールから透けるブラジャーのライン」という悩みを解決した。900万枚ということは、成人女性の4人に1人が所有していることになる。

「服に生活を合わせるのがモード。着心地がイマイチでも、特別な瞬間には流行のものをまといたい。でも、それだけで24時間暮らしているわけではない」(須藤氏)

<strong>「あったらいいな」という商品で女性の心を掴む</strong>:売り上げの6割を女性衣料にするという目標を掲げる同社。他社に出遅れたといわれるこの分野で、「機能性商品」が最大の強みになるのではないか。
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「あったらいいな」という商品で女性の心を掴む:売り上げの6割を女性衣料にするという目標を掲げる同社。他社に出遅れたといわれるこの分野で、「機能性商品」が最大の強みになるのではないか。

生活の大半を占めるのは家事や仕事、通勤、育児といった現実。そんなとき、アイロンいらずのブラウスやすぐ乾くシャツなど、家事時間を短縮してくれるユニクロの商品はありがたい存在なのだ。

「うちの商品は生活必需品とファッションの中間」と柳井社長はいう。生活のリアリティはファッションの対極ではなくベースに存在する。一般に、デザイナーなら特徴的なデザインを施すなど何らかの個性を付け加えたくなるが、ベースに求めるのはシンプルなデザインと機能性の高さ。ユニクロのように自己満足を排除し、買い手目線を貫くことができる企業は稀だ。

「実はリアルクローズという言葉は1970年代から使われていますが、ファッション業界はそれを正しく表現できずにいた。柳井社長はそれを世界ではじめて形にして見せたのです」(同)

現実に向き合う女心の理解力と対応力が、9割という圧倒的な支持を勝ち取っている。

※すべて雑誌掲載当時

(澁谷高晴、市来朋久=撮影)