「童話マトリックス」で自分のタイプを調べてみよう
むかしのように「上司の言うことは絶対」ではない現代では、一人ひとりの部下の性格や価値観などの特性を理解し、その人に最適な「1on1マネジメント」を行うことが、パフォーマンスアップのカギとなります。
その部下それぞれの特性は、長いつきあいとコミュニケーションによって理解し得るものですが、性格タイプを診断することで、大まかな傾向を把握することができます。タイプを知ってフレームをつかむことで、相手の性格を把握しやすくなり、「自分とは異なる人間であること」と「その性格に合ったマネジメントが必要なこと」も理解しやすくなります。
そこで、わたしが考案した「童話マトリックス」を活用し、その人に求められる「1on1マネジメント」を実践しましょう。この連載では、以下の4タイプを軸に、最適なアプローチを解説していきます。
ここまでが、前回のおさらいです。今回は「童話マトリックス」のタイプ診断を、まずみなさんがやってみましょう。
方法はふたつあります。まず、もっとも手軽なのは、わたしの会社が運営する診断サイトのURLから、チェック形式で選択して診断結果を受け取ること。質問に答えれば、自動集計してあなたのタイプと解説を表示してくれます。
診断にあたっては、メールアドレスを記入してもらいます。メルマガの配信可否をたずねるチェックボックスがありますので、不要であればチェックを外してください。SPIなどの適性検査を受けたこともあるかと思いますが、あのような簡単な質問に20個答えていただくだけなので、5分とかかりません。
みなさんは、どんな性格タイプだったでしょうか? WEBの診断サイトを活用した人は、すでに解説を読んで自分の性格タイプの概要がつかめたことと思いますが、少しここでタイプの解説をしておきましょう。
自分の「行動傾向」×「動機傾向」の組み合わせを知ろう
名前が「童話マトリックス」という通り、あるふたつの要素を軸とした4象限マトリックスによって、それぞれのタイプは決まります。そのふたつの要素とは、「行動傾向」と「動機傾向」であり、先ほどの質問はそれを確認するためのものでした。
まず行動傾向では、仕事でもプライベートでも「やるべきこと」に対して、「まとめて一気にやりたい」短期集中型の「うさぎ」と、「分散してコツコツやりたい」長期コツコツ型の「かめ」に分類されます。それぞれの細かな特性は、上記の図にまとめています。
「うさぎ」はさっさと片づけてしまいたいし、「かめ」はじっくり計画的に取り組みたい。そして、「そのほうが、モチベーションが上がる」ということなのです。
「うさぎ」の傾向が強い人は、「やるべきこと」があると計画性よりも「まず取りかかる」。スピード感があるのはいいのですが、ついやりすぎてヘトヘトになってしまい、次の仕事の体力まで考えていない、ということがよくあります。一点集中でシングルタスクを素早くこなすことに長けたタイプです。
一方、「かめ」の傾向が強い人は、「やるべきこと」に対してプランを考えます。「1日にどのくらいやればいいか」「いつからはじめれば間に合うのか」と全体を俯瞰して、自分のペースをつかんでからコツコツと作業をはじめるのです。スピード感こそありませんが、複眼バランス思考ができ、マルチタスクでも混乱なくこなすことができます。
続いて、第2の軸は「動機傾向」。「やるべきこと」に対し、どのような動機が働くかをふたつの方向性に分けました。「楽しいことならすぐやるが、そうでないとギリギリまでやらない」快楽追求型の「キリギリス」と、「やるべきことに義務感を持ち、早めに着手して解放されたい」リスク回避型の「アリ」に分類されます。
また、別の視点では、「キリギリス」は目的追求型でビジョンの実現に関心を持ちます。一方、「アリ」は問題解決型で、目の前の問題をクリアすることに関心を持つのです。
「キリギリス」の傾向が強い人は、「快楽追求」と「目的追求」がモチベーションの源泉です。目標やビジョンが自分にとってハッピーなものでないとモチベーションが上がりません。ダイエットでも「痩せたらこんな服を着よう!」というビジョンを描いています。ただし、「やりたいこと」ならいいのですが、そうでないと先延ばし傾向にあります。義務的な仕事や、ルーティンワークには興味が湧かず、おざなりにしがちです。
一方、「アリ」の傾向が強い人は、行動の動機は「リスク回避」と「問題解決」であり、「後悔したくない」「間違えたくない」という気持ちが行動を駆り立てます。仕事や目の前の手間は確実に対処し、先延ばしとは無縁です。
それぞれの仕事観をひとことで言えば、
●「好きを追求するのが仕事だ!」と考える「キリギリス」
●「求められたこと、任されたことに応えるのが仕事だ!」と考える「アリ」
と言うことができます。
この「行動傾向」と「動機傾向」の組み合わせが、「童話マトリックス」の4タイプをかたちづくります。次回は、この4タイプそれぞれの特性について、さらに掘り下げて解説していきます。
「決めつけ」で理解をサボってはいけない
最後に、「童話マトリックス」に限らず、あらゆる性格診断やタイプ診断に言えることですが、診断結果を過剰に信用することには注意が必要です。「童話マトリックス」は自分で質問に答えた内容をもとにしたタイプ診断ですから、その考え方や性格の傾向は的外れではないでしょう。
それでも、あくまで「傾向」なのです。細かなところでの違いや、本人が自覚して改善している点などもあるでしょう。また、4タイプに分類していますが、みなさんの多くは複数のタイプの要素を併せ持っています。
WEBの診断サイトで最後に記入したレーダーチャートを振り返ってみましょう。以下は、「うさギリス」であるわたしのレーダーチャートです。「うさぎ」の行動傾向も、「キリギリス」の動機傾向も極めて強く出ています。でも、「かめ」の行動傾向と「アリ」の動機傾向も、わずかながらに持っていることがわかります。
わたしはだいぶ「うさギリス」の傾向がはっきりしているほうですが、みなさんの中には、「うさギリス」と「うさアリ」の差がほとんどないなど、別タイプの要素を強く持つ人もいるでしょう。それは、両方の性質を併せて考えていく必要があります。
また、このタイプ診断で部下のすべてをわかった気になってはいけません。大事な部下の本当の気持ちや性格は、部下と膝詰めで対話を行い、時間をかけて理解していってください。





