マレーシアヤマト運輸 宅急便事業部長 山内秀司

SDの育成に力を入れる現地の宅急便事業部長、山内秀司は手応えをこう語る。

「『ありがとうございます』と帽子をとって頭を下げれば、顧客からも礼をいってもらえる。ならば、もっといいサービスをしようと思う。日本でも宅急便の草創期、初めは挨拶に抵抗したドライバーたちはそうやってSDの仕事を理解していきました。同じ光景があるのです」

「同じ光景」は、マレーシアヤマトの成長においても始まろうとしている。ザキたちの活躍により、宅急便取り扱い個数も上昇カーブに乗りつつある。需要が期待されるのは、急速に拡大するネット通販だ。翌日配達、時間帯指定、クール宅急便、代引きのコレクト宅急便と、他社にない「オンリーワン」のサービスを提供する「TA-Q-BIN」は通販業者に評価が高い。

マレーシアヤマト運輸社長 
日暮一茂

その1つ、ケーキ通販のベンチャー「ハンブル・ビギニングス」を起業したアモス・チョンは、「宅急便を使ってから、自前で配達していたときより、売り上げは60%アップした。われわれがつくるケーキをお客様に約束の時間に届けてくれる信頼感がすばらしい」と満足げだ。

00年に進出した台湾ではすでに宅配便市場でシェア1位獲得。「宅急便はオンリーワン。マレーシアでもナンバーワンになれる」と話すザキの言葉が現実になるとき、何が実現するのか。マレーシアヤマトの社長、日暮一茂が話す。

「1つは、生活革命です。クール宅急便なら、ペナンの新鮮なシーフードが300キロ離れたクアラルンプールの家に翌日届く。上海ではすでにクール宅急便がブームの兆しです。日本がそうだったように、物流サービスにより、ライフスタイルが劇的に変化する。そんな生活革命を起こし、宅急便を宅配便市場のスタンダードにする。そして、もう1つはアジア圏を1つの面としてとらえ、日本とつながりながら、宅急便ネットワークを構築する。それがヤマトの海外戦略です」

(文中敬称略)

(鶴田孝介=撮影)
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