朝の朝礼では、ヤマト体操と社訓を唱和した後に、集配の確認作業が始まる。この日行われた「第1回マレーシアヤマト運輸安全大会」で、車の整備、安全確認、運転技術、接客技術などがチームで競われた。あるチームは標語に「Think Safety」を掲げていた。

「ヤマトが他の会社と違うのは、すべてのカスタマーをハッピーにしようとすることです。ボクは今、1日180個の荷物を運んで忙しく、営業を行う余裕がなかなかありません。でも、常に笑顔でお客様に接すれば、喜んでくれて、新しいビジネスにつながることも学びました。配達先の地元の鍋料理店が始めたデリバリーサービスの宅配の契約に成功して、地方紙に写真入りで取りあげられたこともありました。もう感激でした」

支店の1日は日本と同様、毎朝、朝礼で始まり、社訓を全員で唱える。ザキと会ったこの日の社内コンテストも、英語版の社訓唱和から始まった。「ヤマトは我なり」は「We ‘all’represent the company」(全員が会社の代表者)。その意味合いを尋ねるとザキはこう答えた。

「お客様はボクらのことをすべて見ている。だから、何をやっても会社に影響する。お客様によい評価をしてもらえるよう、ボクらはチームで考えながら頑張る。オカヤマさんもとてもよく教えてくれる。ヤマトのチームワークは最高です」

活き活きと働く姿を「ワイフが喜んでくれる」と目を輝かす。応募を勧めたのは妻だった。子供が2人。夢は「支店長になること」だ。階層格差が残るこの国では非エリート層は職を転々とするが、ヤマトでは実力次第でキャリアアップの途が開ける。「それもヤマトが違うところ」。だから懸命に働く。そんなザキから、岡山は逆に学ぶこともあるという。

「ザキは荷物が多くてどんなに疲れていても、笑顔を忘れない。日本ではお歳暮の時期など忙しくて、SDもつい笑顔が引きつってしまうのに、ザキはいつも笑顔でいる。自分の1年目のときより、ザキのほうがSDの仕事を必死で理解し、実践しようとしているように思います」