50代からの投資戦略を考えてみよう
これまでの知見をまとめて、50代からの投資戦略を考えてみましょう。繰り返しになりますが長期的にリスクの少ない形で資産形成をするためには株式の分散投資が最適です。TOPIXやアメリカのS&P500のように多くの株式に分散投資をする投資信託を買うというのが人気なのはこの理由からです。
その際に、日本株よりもアメリカ株や世界全体のオルカンが人気な理由は、海外の方が経済の成長率が高いからです。
実際に試算してみましょう。仮にアメリカ株がドル建てでこれまでの歴史と同じように年率10%で上昇すると仮定してみます。一方で日本の経済成長がアメリカよりも低いことから日本株の上昇率を年率5%とやや低く見積もって計算してみましょう。
50代で投資した100万円は引退年齢の75歳のときにどうなっているでしょう?
59歳のときにアメリカ株の投資信託を買ったお金は、上記前提では米ドル建で約4.6倍に増えます。複利の効果で、投資信託は雪だるま式に増えます。とはいえそのときに1ドル=110円の円高に戻っていたとしたら為替差損が生じます。それも含めて計算してみると投資した100万円は337万円と、約3.4倍になります。
一方で日本株の投資信託の場合、上記仮定のように日本経済の成長率の低さを反映すると想定すれば、59歳で投資して75歳で受け取れる金額は218万円、つまり約2.2倍です。
このように利回りの違いは、複利のおかげで長期投資になればなるほどどんどん利いていきます。一方で為替のリスクは元に戻すときの一度だけ。このことからわかることは長期投資では外国株投資の為替リスクは小さくなるのです。
59歳ではなくもっと若い50歳から資産形成を始める場合はさらに差がでます。同じ100万円が75歳になるころには、米国株なら795万円、一方で日本株なら339万円という計算です。
59歳から新NISAを始めても遅くはない
老後の蓄えについては、政府の試算では2000万円の資金が必要だとされています。
「2000万円なんて無理だよ」
とお考えかもしれませんが、もし50歳から新NISAを始めるのであれば、最初の年に新NISAの上限である240万円の投資をしたものが、75歳には約1900万円に化け、ほぼその金額に到達することが期待できます。
59歳とかなり引退に近づいた方でも、もし今年、上限の240万円から始めてこれから3年で合計600万円を株式市場に投資すれば、75歳の老後資金はやはり約1900万円まで増えます。つまりまだ老後に間に合うということです。
新NISAは長期投資ですから、トランプ大統領誕生や世界分断リスクといったこの先の変化も、15年、20年という時間が減らしてくれます。そして新NISAで増やした老後資金には税金がかかりません。
そのことを考えたら、すでに株価がずいぶん上がってしまったと感じる2024年末時点であっても、そしてかなり年齢が上がってしまったと感じている人でも、今から新NISAを始めることは遅いとは言えないのです。