マグニフィセント7が牽引するS&P500

実は過去2年のS&P500の上昇はマグニフィセント7と呼ばれる、アップル、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラの7社の株価の上昇が大きく寄与しています。そしてこの7社を差し引いたS&P493で見れば株式の収益率は昨年は年率で5%程度、直近では年率13%程度と過熱しているわけではないのです。

この先、マグニフィセント7の株価はAI期待が終われば下がるかもしれません。さらにはトランプ大統領の再登場で来年は関税が引き上げられるなど貿易摩擦が増えることで、経済全体にはマイナスの動きも出るでしょう。短期的には株価が乱高下するリスクがあります。とはいえ500社に分散投資していれば、長期的にはアメリカ株のインデックス投資の利回りは年利で10%程度の適切なレンジで収まると考えられます。これが覚えておくべきひとつめの教訓です。

ふたつめに為替レートは、この先、アメリカの高金利政策が終わることでいずれ1ドル=110円といった以前の水準に戻る可能性があります。そうなれば今1ドル=150円台の時期に米国株を買った人は、それを売却するときには1ドル=110円で円に替えることになるでしょう。150円でドルを買って110円で売れば財産は▲27%も減ってしまいます。この▲27%を覚悟しておくべきだというのがもうひとつのポイントです。

このふたつが意味することは、この後、まとめて考えます。

50歳なら25年後、59歳なら16年後の老後資金を準備する

5 50代の人が今から投資をするとどうなるの?

さて、ここまでの話で、まだ新NISAを始めていない読者がこれから投資を始めるべきかどうかの手掛かりはほぼ出そろいました。「ほぼ」というのは、最後のピースが残っているからです。

それは、何のために投資をするのか? という話です。

ここ1~2年では「AI株、めっちゃ上がっているから」ということで預金を株に替え、それで「何もしていないのに27万円も儲かっちゃった。しかも無税!」というようなギャンブルのような楽しみ方もありでした。

しかしそのようなAIブームは近々終わるかもしれません。ではこれから投資を始める人の目指すべきゴールは? 政府がもともと推奨しているように、それは老後資金の形成であるべきだと私は思います。

50代の人は働けるとしてもあと20年程度、75歳まで働いた後はわずかな年金だけでは暮らせずに老後資金を取り崩す生活になります。それまでの間に生活資金を増やしておくことが新NISAの本来の目的です。

50歳の人なら25年後、59歳の人なら16年後にまとまった老後資金を残す。このような目的の長期投資は新NISA向きです。そしてこれから説明するように実は長期投資は、心配な為替リスクをなくしてくれます。