おもちゃ市場が過去最大規模に拡大している。子供は減っているはずなのに、なぜなのか。コンサルタントの鈴木貴博さんは「“大人需要”や“海外需要”の高まりに注目するメディアが目立つが、本質はもっと深いところにある。4つの視点で読み解くと、その黒幕が見えてくる」という――。
床に置かれたおもちゃ箱から玩具が零れ落ちている
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5年連続で市場拡大、過去最高に

日本では少子高齢化が急速に進んでいるにもかかわらず、おもちゃ市場は顕著に拡大しています。日本玩具協会の発表によれば2024年度の国内市場規模は前年比8%増の1兆992億円で、これは過去最高であるとともに5年連続して市場が拡大しています。

おもちゃ市場規模と15歳未満人口の推移(2005年度~2024年度)。※15歳未満人口は暦年データ。玩具市場規模は、希望小売価格ベース。一般社団法人 日本玩具協会と総務省統計局のデータをもとにプレジデントオンライン編集部が作成。
おもちゃ市場規模と15歳未満人口の推移(2005年度~2024年度)。※15歳未満人口は暦年データ。玩具市場規模は、希望小売価格ベース。一般社団法人 日本玩具協会と総務省統計局のデータをもとにプレジデントオンライン編集部が作成。

それで「なぜ市場が成長しているのか?」が今回の記事のテーマです。

これは戦略思考トレーニングとしてもちょうどいいテーマなので、読者のみなさんと一緒におもちゃ市場成長の要因を戦略思考でより深く分析してみたいと思います。

まずはメディアの定説から。少子高齢化なのにおもちゃ市場が拡大しているのはキダルト需要が爆発的に増加しているからだといいます。キダルトとはキッズとアダルトを組み合わせた造語で、20代から40代の大人が本気で玩具をコレクションする需要を指します。

最近私もニュース番組のコーナーでそのような報道を目にしました。キダルト需要の高まりをうけて玩具メーカーの社員が大人向けの新しい玩具を開発しているというニュースです。

ニュースとしては間違っていません。

ただ戦略コンサルタントとしての視点で見るとこの見方、市場の捉え方として芯を喰っていない理解だと感じます。市場で起きていることはもう少し深いのです。おもちゃ市場拡大の理由を頭の体操を交えながら4つの視点で順番に解明していきましょう。

市場を読み解く「4つの視点」

【視点1】最大市場はトレーディングカード

まず最初のファクトを提示します。おもちゃ市場の中で最大カテゴリーが何かというと、じつはぬいぐるみでもプラモデルでもありません。統計データによると1兆円市場の中の最大カテゴリーはトレーディングカードで市場規模は約3000億円、おもちゃ市場の約3割を占めます。

日本で発売されたトレカのうち海外で一番人気が高いのがポケモンです。世界に39枚しかないといわれる超レアもののカードの場合、オークションの落札価格が日本円で1億円を超えています。ポケモンの次に人気が高いのが遊戯王で、こちらも数千万円の落札例があります。

米国のドラゴンボールZとポケモントレーディングゲームカード
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コレクターの間ではレアカードを数万円から十数万円で取引するのが高額取引としてはボリュームゾーンでしょうか。トレーディングカードが高額になったことで、トレカ店が強盗に襲撃され希少カードが奪われる事件も起きています。

トレカ同様に投資価値がある玩具にはフィギュアがあります。フィギュアも村上隆さんのアート作品レベルになると億単位の投資商品として扱われます。

ではこのキダルトによるコレクター需要がおもちゃ市場拡大を牽引していると考えるべきなのでしょうか?

実はここはおもちゃ市場の中でも特殊市場だととらえた方がいいかもしれません。