診断や治療に問題があることも

そんなわけで、診療所や病院が「小児科」「小児○○科」などと標榜していても、先に述べたように専門医どころか、小児に詳しい医師がいないかもしれないのです。これは大問題でしょう。

ある日、顔にブツブツができた赤ちゃんが私のクリニックを受診し、保護者の方は「看板に『小児皮膚科』と書かれたクリニックへ行ったのですが、よくわからないから小児科に行くようにと言われてきました」とのこと。生まれて間もない子によく見られる典型的な「新生児ざ瘡」だったので、小児皮膚科を標榜するなら診療できなければおかしいと思いました。

また別の日には、食事制限を解除してほしいという子どもが受診し、保護者の話によると「別の内科クリニックで、多数の除去食を指示されました」とのこと。食べ物が原因と思われる湿疹でも、子どもの食物除去は成長のために、必要最小限にしなくてはいけません。食べ物によっては、食べることでアレルギーを緩和する「経口免疫療法」を行うこともあります。血液検査でいくつもの食べ物に対してアレルギーがあるという結果でも、症状が出ない場合は食べさせます。そういったことに詳しくない医師が、アレルギーの原因として疑わしい食べ物を多数禁止していたのです。

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最も心配なのはオンライン診療

私が今一番心配しているのは「オンライン診療」です。先日受診した子の保護者の方は「夕食後に吐いて、突然ゼイゼイし始めて咳も出ていたのでオンラインで診てもらいました。初めてかかる遠方の内科クリニックでした」とのことでした。

このクリニックは、厚生労働省が出している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に照らすと、いくつもの原則に反しています。以前から薬をもらっているような慢性の病気でなく、出始めた症状で受診することを「初診」といいますが、オンライン診療での初診は原則「かかりつけ医」でないといけません。実際の対面で行う診察に比べて、オンラインでは情報量が少ないからです。また、必要に応じて対面診療を適切に組み合わせなければいけません。

今回のような症状では、緊急の処置が必要になることもありますが、遠方では「すぐに来てください」あるいは「往診します」といったことができません。しかもアレルギーの中でも激しいアナフィラキシーであった可能性もあります。その医師は「アレルギーの内服薬を出すから、明日近くの小児科でアレルギー検査をしてください」と言ったそうで、おそらく小児科専門医でもアレルギー専門医でもないでしょう。

このお子さんは幸い大事には至りませんでしたが、いつか緊急対応が必要な患者さんが、不十分な対応によって病状が悪化しないかととても心配です。