110万人調査でわかった「睡眠と健康の相関関係」
睡眠についてもっとも興味を持たれている問いは、「寝不足の日は、仕事や勉強の効率が悪くなるのではないか?」というものと、「自分は4時間くらい眠れば十分なのだが、もっと眠らないと体に悪いのだろうか」というものです。
つまり、「眠れないこと」や「睡眠時間が短いこと」が、日常の生活のパフォーマンスに与える影響を、みんな心配しているわけです。
日常生活に支障をきたすようであれば、「健康を害すのではないか」とか、「病気の原因にもなるのではないか」という心配にもつながってくるでしょう。
そこで2003年に発表された、睡眠時間に関する研究結果を紹介しましょう。アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校と日本の「対がん協会」が共同で行なったものです。
30〜104歳の約110万人を対象に、睡眠時間によって、どれくらい死亡率が変わるのかを調べるため、年齢や食習慣、運動、病歴、喫煙歴などの要因も考慮し、6年間にわたる追跡調査を行ない、睡眠時間が健康にどれくらい関わっているかを検証しました。
6〜7時間の人より8時間睡眠の方が死亡率が高い
検証の結果、理想とされる一日8時間睡眠の人の死亡率は、なんと6〜7時間の人よりも1割くらい高くなりました。さらに、8時間以上の人と5時間の人を比べると、8時間以上の人のほうが高い死亡率を示していたのです。
8時間以上の睡眠は、体に悪いのでしょうか?
この実験結果だけで安易に結論を出すのは危険であり、研究グループも「なぜ、長く眠る人たちの死亡率が高いのかわからない。6~7時間の睡眠で健康状態がよくなるのかどうか、これから研究したい」と述べています。
さらに、不眠で悩んだ経験のある人の死亡率を、不眠を経験したことのない人と比較したデータも紹介されています。その結果は、不眠の経験のある人の死亡率は、そうでない人とほとんど変わりなかったのです。
不眠で悩んだ人の多くは、実際の睡眠時間は当人たちが思うほど減ってはいませんでした。よって、不眠症だったわけでなく、多くはうつ状態であったと研究グループは指摘しています。
ただ、睡眠薬を飲んでいる人の死亡率が高かったことは指摘されています。睡眠の不足よりも、薬のほうが健康に悪影響を及ぼすことは、データ上から確かなようです。