ゴキブリに24時間光を当てると動かなくなる

では、動物はどうでしょうか? 昆虫類、魚類、カエルなどの両生類、ヘビなどの爬虫類は、一日のうちに、じっと動かなかったり、行動がゆっくりになったりする時間帯があります。

あるいはゴキブリに24時間光を当てて刺激し続けていると、動かなくなる時間が長くなることが知られています。

この現象は、人間に睡眠不足が続いたあと、それを解消するために長く眠ることに似ています。ただ、魚類や両生類は脳波を見るかぎり、睡眠の脳波はないといわれます。

睡眠中に、脳波に変化が現れるのは、哺乳類や鳥です。鳥は警戒心が旺盛で、睡眠の合間にある一定時間、「警戒睡眠」という状態になることがわかっています。

この警戒睡眠中、鳥は目を開け、脳波も起きているのと同じような状態になりますが、姿勢は眠っているときと同じです。

また、渡り鳥のなかには、片目だけをつぶって眠る鳥がいます。このときの脳波を調べると、目を閉じているほうの脳は睡眠の脳波を示し、開いているほうの脳は、覚醒の脳波を示します。

眠りは多くの動物の生存に欠かせない活動

では、あらためて動物はなぜ、眠るのでしょうか?

一つの可能性は、脳が活動するときに出る老廃物を取り除くため。

もう一つの可能性は、脳が活動する際に使った栄養素を補給するためです。

「可能性」としたのは、睡眠が生物にどのような効果をもたらしているのか、確かなことは、科学においていまだ判明していないからです。

ただ、睡眠が生き物に欠かせないものであることは、「眠らせないようにした動物がすべて死んでしまう」という研究結果から明らかに示されています。

現在は、倫理的にあり得ない実験ですが、20世紀のはじめごろ、フランスのアンリ・ピロリンは、犬を眠らせないようにしたらどうなるか断眠実験をしたのです。

すると、7日から10日の間に、実験の犬はすべて死んでしまいました。犬の脳に、特別な異常は見つかりませんでした。しかしほかの動物でも検証した結果、やはり眠らせないようにした動物はすべて死んでしまいました。

このことからも、眠りが多くの動物の生存に欠かせない活動であることは明らかです。

一緒に眠るイヌとネコ
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