高齢者がいつまでも若々しくいるためには、何をすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「人は、『人にやってもらうこと』に慣れすぎて、自分で身の回りのことができなくなると、急速に衰えてしまう。実際、施設に入ったとたんに認知症になってしまう高齢者は案外多くいる。だから高齢者の幸福指数の高いスウェーデンでは、高齢者をあまり介護施設に入れず、その代わりに、デイケアなどの福祉体制を充実させている」という――。

※本稿は、高田明和『20歳若返る習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

皿洗い
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掃除は、心はもちろん脳や体をも清らかにする

先の記事で、瞑想と同じような効果をもたらす、「作務」を紹介しました。

禅宗の「作務」の修行でよく知られているのは、お寺の境内や室内の掃除でしょう。

禅宗では、とくに掃除を重んじます。一に掃除、二に看経(声を出さないで経文を読むこと)、三に坐禅、とされているくらいです。修行でもっとも大事なのは、坐禅ではなく、掃除だとしているのです。掃除の大切さを示すエピソードがあります。

仏陀の弟子である、チューラ・パンタカ(周利槃特)は、お経も満足に覚えられない、物覚えの悪い男性でした。

ブッダはパンタカに一本の箒を与え、「塵を払いなさい、垢を除きなさい」とおっしゃったのです。要するに、「掃除をしなさい」ということですね。

物覚えは悪いけれど、ひたすら真面目だったパンタカは、雨の日も風の日も、ただただ寺の内外を掃除して歩きました。その様子を見て馬鹿にして笑う弟子たちもいました。

ある日ブッダは、「パンタカよ、掃除は大変ではないか?」と尋ねます。すると彼は、こう答えます。

「いえ、お師匠様、掃除は心の塵を払おうと思ってやっているので、少しも大変ではありません」

そして彼の心はきれいになり、馬鹿にした弟子たちよりもずっと早く、悟りを開くことができたということです。

私も机回りや仏壇、トイレなどを毎日のように掃除しています。掃除しているうちに気分転換ができ、やりはじめる前は面倒だったとしても、終わったあとは確かに心がクリアになることを感じます。

それはまさしく、うつなどの原因となるストレスを取り去る効果であり、瞑想と同等だとすれば認知症の予防にもなるのです。騙されたと思って、パンタカのような素直な気持ちで、掃除を実践してみてください。