大都市が抱える「老いた分譲マンション」という大問題
オフィスや商業スペースの場合は、ビルの所有者が一元的にビル全体の維持管理に関する意思決定を行い、実行にうつすことができる。しかし、分譲マンションでは、管理組合が機能しない状態に陥ったり、区分所有者同士の合意形成が図れなくなった場合、管理不全から管理不能となり、将来、建替えも解体もできず、不良ストック化するリスクがある。
ただし、この長期的な維持管理については、タワーマンション固有というよりも、全ての区分所有のマンションに共通する課題であり、これから老いた分譲マンションが増え続ける日本の大都市が抱える大問題である。こうした点については、行政任せにするのではなく、つくり手側の開発業界全体で真摯に実効性のある解決策を提示すべきである。
加えて、50年前に再開発した高経年ビルの現状や課題を検証しながら、災害対応や維持管理問題の解決策が見いだせていない区分所有のタワーマンションを、駅前再開発によって都市の成長に重要な拠点エリアにつくり続けることが、長期的にどのような影響があるのか、今一度、立ち止まって検討する必要がある。
拡大志向を中心とした都市政策からの根本的な転換を
再開発という事業手法は、時代のニーズに合わせた都市空間へとつくり替えていくためには必要不可欠である。また、バブル経済崩壊後の経済対策として推進されてきた都市再生の取り組みによって、不良債権化した土地の流動化、都市の不燃化の促進、100年に一度と言われるようなターミナル駅での大規模な再整備、再開発が行われたエリアやその周辺の地価上昇が実現しているのも事実である。
しかし、都市再開発法制定から50年以上、都市再生特別措置法の制定から20年が過ぎ、社会経済状況や市民の意識も変化している中で、様々な副作用や問題も明らかになっている。
本格的な人口減少時代の到来に向けて、
・地域固有の魅力や個性に即した「公共性」を評価する仕組みづくり
・計画段階からの実効性ある市民参加プロセスの導入
といった観点から、拡大志向を中心としたこれまでの都市政策を根本的に転換していくことが急務である。