トランプ氏に5分で電話を切られた石破首相
10月の衆院選で「自公で過半数」という最低限の目標も達成できなかった石破茂首相だが、野党が政権構想を持っていなかったことに救われて、なんとか第二次石破内閣が発足した。
しかし、国民民主党との部分連合で安定した政治は望めない。さらに、石破首相にとって悪夢ともいえるのが、米大統領選で再選を果たしたドナルド・トランプ氏との相性の悪さだ。
私は、2020年8月にポスト安倍を論じた「ポスト安倍の絶対条件は世論調査でなく外交能力だ」という寄稿で、「(石破氏の)回りくどい話しぶりも良くない。ドナルド・トランプ米大統領には、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と同じように嫌われ、5分で電話を切られそうなタイプで、日本の国益を守れないだろう」と書いたことがある。
11月7日、石破首相はさっそく当選祝いの電話をトランプ次期大統領にかけたが、フランスのマクロン大統領の25分とか韓国の尹錫悦大統領の10分に対して、私の4年前の予言通り5分で終わってしまった。さらに、南米訪問の帰途にフロリダでトランプ次期大統領と会いたいと申し入れたが断られた。
これで、支持率が伸びず、外交もうまくいかないということになると、来年の参議院選挙前にも交代すべきという声が高くなる可能性がある。
そのときに、最有力候補といわれるのが、林芳正官房長官と高市早苗前経済安全相である。
人気では高市氏が林氏より一歩リード
私はもともと「トランプ大統領」を想定すれば、茂木敏光前幹事長か林芳正氏が望ましい首相候補だと言い続けてきた。政策についての考え方でも自民党内の中庸といったところだ。
ただ、9月の自民党総裁選では2人とも一般党員投票が伸びず、党内ではもっともリベラルな石破氏と、もっとも保守的な高市氏の決選投票になった。
林氏は全体で4位と健闘したし、討論会などでも安定した議論が好感を持たれ、官房長官に留任し、有利な立場にある。
しかし、一般国民からの人気は女性だということもあって高市氏のほうが上だし、とくに保守派からの期待は大きい。対アメリカで考えても、リベラル過激派のカマラ・ハリス副大統領との相性はあまりよくなさそうだったが、トランプ氏とは考え方も行動様式も合うのではと見る人もいる。
そこで、政治家になる前から高市氏と面識があり、注目してきた立場から高市氏のこれまでの歩みを振り返りつつ、強みと克服すべき点を少し考察してみたいと思う。