10月27日に投開票された衆院選では、自民・公明の与党が過半数割れに追い込まれた。ジャーナリストの宮原健太さんは「自民党執行部に対する責任論が党内からも噴出している。石破茂首相には、それでも十分な責任を取れない深刻な事情がある」という――。
当選を決めた自民党の森山幹事長(右)の名前にバラを付ける総裁の石破首相=2024年10月27日、東京・永田町の党本部
写真提供=共同通信社
当選を決めた自民党の森山幹事長(右)の名前にバラを付ける総裁の石破首相=2024年10月27日、東京・永田町の党本部

「幹事長すら辞めないのはおかしい」

衆院選で議席を大きく減らし、自公過半数割れという窮地に立たされている石破茂政権。

しかし、選挙結果の責任は石破首相どころか、自民党ナンバー2である森山裕幹事長すら取らず、自民党内の不満を抱えたまま特別国会を迎えようとしている。

一体なぜなのか。

その背景には、執行部が十分な責任を取れないほどギリギリの政権運営を強いられているという事情があった。

「未曽有の惨敗という結果を残しながら、幹事長すら辞めないのはおかしい」

衆院選で落選した自民党の元議員の1人は、大敗後も何事もなかったかのように存続しようとしている石破政権に対して、怒りをぶちまけた。

「石破首相が辞めるのは、9月に実施した自民党総裁選をまたやらなければならなくなるほか、日本のトップが短期間で交代することになるため難しい面もある。ただ、その場合は党務を仕切っている森山幹事長が責任を取って辞任するのが筋のはずだ」(自民党の元議員)

自民党本部による「2000万円支給問題」

自民党内からこれほどの怒りの声があがっているのは、単に選挙で惨敗したからだけではない。

選挙戦の最終局面で、野党候補に競り負ける要因を作ったのが、まさに自民党執行部であると考えられているためだ。

その要因というのが、裏金非公認議員への2000万円支給問題である。

選挙期間中の10月23日に共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、自民党本部が裏金問題で非公認となった議員が代表を務める政党支部にも2000万円を支給していたことをスクープ。

石破首相や森山幹事長は「各選挙区における自民党の政策のアピールや、比例票の掘り起こしのためで、非公認議員に配ったわけではない」と弁明したが、2000万円という金額が、公認候補のいる選挙区に配られる公認料500万円と活動費1500万円を足し合わせたものと完全に一致したため、公認料が含まれるような大金の支給に野党からは「ステルス公認」「偽装非公認」という批判が飛び交った。

この問題が選挙戦に大きな変化を与えたのである。