「行動が変わるか」を基準に選んでほしい

僕はいい本に出合うと、マーカーを引いたり、書き込みをする箇所が多くなります。たとえば、健康本を読んでいるときにBDNF(脳由来神経栄養因子)など、少し専門的な言葉が出てきたとします。BDNFには認知症になりにくくする効果があります。アジやサンマなど脂ののった青魚のDHAやゴマや赤ワインはBDNFを増やしてくれます。また、運動するとBDNFが増えます。これを読んだだけでは、忘れてしまいます。そこでBDNFに印をつけて「これが認知機能に影響を与える」などと書き込みをしておくのです。すると、もう一度読んだときに、思い出します。

健康本を読んで、自分流に目標をつくり直すこともしています。たとえば「野菜は1日350g以上食べよう」と書かれていたとします。しかし、どのくらい食べれば350gになるのか、よくわかりません。厚生労働省の調査によると、日本人の野菜の平均的な摂取量は成人男性で290g程度で、60gが足りないそうです。ミニトマト1個は、10g程度です。そこで「ミニトマト6個分の野菜が足りない」と考えれば、わかりやすくなります。

また、塩分を減らすと高血圧が減ることはよく知られています。それだけでなく、塩分を減らすと胃がんが減ることもはっきりしています。ですから、塩分摂取量が多い青森・秋田・岩手・長野は他の都道府県に比べて、少し胃がんに罹る人が多くなっています。一方で、だし文化が発達している関西は、だしを使うことで、しょうゆや味噌の使用量を減らし、塩分の摂取が少ないために、胃がんに罹る人の数は少なくなっています。

つまり、塩分を減らすことで高血圧、脳卒中、胃がんを減らすことにつながるわけですが、厚生労働省は男性が1日7.5g以下、女性は6.5g以下に抑えるのがいいと言っています。これではよくわかりません。そこで、僕はいま食べているよりも、まず1g減らすことを心がけています。1gを減らすためにはどうすればいいか。調べてみると、標準的な梅干しは1個当たり、1〜2.5gの塩分が含まれています。僕は夏バテしないように、梅干を時々食べていますが、1g減らすためには、1回に食べる量を1個から半分にすればいいことがわかります。大雑把でいいから実践可能な方法に工夫するのです。

良書があなたの習慣を変える

僕はできるだけ目標を低く設定するようにしています。「自分でできた」という達成感が大事ですし、三日坊主になるのを防ぐこともできるからです。1日の運動量にしても、「1日8000〜1万歩歩かなければいけない」と考えている人が多いのですが、それはできる人が実践すればいいのです。人は普通に生活しているだけで1日4000歩は歩いていると言われています。家の中で、あるいは通勤などでその程度は歩いているのです。とすれば、あと10分ほど歩けばいいのです。これなら誰でも実践できます。

健康本はあなたの行動が変わるかどうかを基準に選んでください。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。

(構成=向山 勇)
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