首都圏の新築マンション市場は、ピーク時の2000年には9.5万戸が大量供給された。だが、不動産コンサルタントの長嶋修さんは「実はこの10年で新築マンションの魅力は大きく減退している」という――。

※本稿は、長嶋修『グレートリセット後の世界をどう生きるか 激変する金融、不動産市場』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

大阪の風景
写真=iStock.com/AH86
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「超高い」「価値低下」「マイナス価値」に3極化

それではまず、筆者の本業の一つである不動産市場の未来から見ていきましょう。今後はどうなるでしょうか。

結論を最初に言えばこうなります。

「1990年のバブル崩壊以降進行してきた不動産市場の三極化が、引き続き、よりコントラストを強める形で、少なくとも2070年くらいまで進行する」

図表1を見ていただければ一目瞭然ですが、15:70:15の三極構造の法則は、不動産市場でも次のような三極化の現象として当てはまるのです。

・上位15パーセントに該当する不動産は、もし今「高い」と感じたとしても今後もその価値は落ちないどころか、一段の上昇
・中位70パーセントはだらだらと下落し、その程度は立地などの要因により年率2~4パーセントの価値低下を継続
・下位15パーセントは無価値あるいはマイナス価値に

つまり、この10年程度起きてきた現象が続くだけのことです。

このことは、2017年に上梓した『不動産格差』(日本経済新聞出版)ですでに指摘済みであり、ここまで実際その通りになってきました。今後も時間の経過とともにその傾向が極まるばかりで、2070年あたりまでこの三極化が継続すると考えています。

あまりにも単純明快すぎる結論に見えるかもしれませんね。

日本の土地資産総額は2000兆→1000兆円に

しかしここから、超高密度で、類書にはない角度と幅、奥行きで、本書を手に取ってくださったあなたに有用な知見をお届けしていきます。知的好奇心が強めの方はどんどん読み進めることができる一方で、直接的な答えやノウハウ「だけ」を知りたい方にはもしかすると向いていない書籍かもしれません。

本書はただの「不動産売買ノウハウ本」でもなければ「金融経済知識本」でもありません。そうした直接的な知識だけを求めている方には、おそらく本書は向いていません。

不動産売買の意思決定はもちろん、各種の投資行動、仕事をどうするか、ひいてはどのように生きるかを考える時、その前提となる「未来予測」は必須と言えるでしょう。

とはいえ昨今、世の中には何やらきな臭いニュースも飛び交っており、未来を明確に見渡せない不透明感に満ちています。

世間ではやれ不動産バブルだ何だと騒いでいますが、1990年バブル期における日本の土地資産総額はおよそ2000兆円だったところ、現在では約1000兆円と、実は半減しています。日本全体としては順調に縮んできたわけです。モノの価格が半分になるって、すごいことですよね。