建築資材費・人件費はまだまだ上がる
新築住宅が売れなくなる2つ目の理由は「これまでのような新築優遇策は、日本の財政上いつまでも続けられないから」。補助金や助成金、住宅ローン控除や固定資産税減免などの税制優遇を含めた広義の住宅予算のうち、およそ半分を新築住宅が占め、残りを中古住宅や賃貸住宅、介護系などで分け合う構図はいかにもいびつであり、このようなアンバランスさは早晩解消されるでしょう。つまり新築が買いにくくなるということです。
3つ目には「建築費はさらに上がる可能性が高い」ことです。2020年に始まったコロナ禍で、またその後のインフレ傾向で建築費は25~30パーセント程度上昇し、BtoB(Business to Business 事業者間取引)における価格転嫁はおおむね行き渡りましたが、BtoC(Business to Consumer 事業者から消費者)への価格転嫁はまだ終わっていません。
さらにはここから人件費の上昇が押し寄せます。長らく3K(きつい・汚い・危険)と言われた建設業界の現場は恒常的な人手不足で、若年層が手薄で高齢化も進む中、現場の大工さんの日当を相当程度上げないと人が集まらなくなりつつあります。正確には、数のうえでは足りるものの、まともな仕事ができる人を確保しようとすると、コストアップせざるを得ないということです。
郊外の「3000万円台の新築」が売れない時代
都市郊外の徒歩圏外や地方では、しばしば2000万~3000万円台の新築住宅が売れたりします。それは超低金利の住宅ローンを利用し、住宅ローン控除を加味すると、近隣で賃貸住宅を借りて賃料を払うより月々の支払いが安く上がるからです。
しかしこうした立地のニーズは昨今、「超」がつくほど限定的です。共働き世帯が圧倒的多数となった現在、求められるのは駅前・駅近など利便性の高い物件で、また若年層であるほど自動車保有比率が低いという現状もあります。
自治体の経営上、そうした徒歩圏外の立地において「上下水道・道路・公園・橋」といったインフラ修繕をはじめ各種の行政サービスをまんべんなく提供するのは極めて非効率であるため、早晩「背に腹は代えられない」として、行政サービスは後回しにされるか、提供されなくなるでしょう。
もっと思い切って「人が居住できる都市計画」の定義から外される可能性も十分にあります。中長期的には、たとえ東京のような大都市であっても、街のコンパクト化を進め、行政効率を上げていかなくては、自治体経営が立ち行かないのです。