日本の住宅は「新築文化」などではない

またある程度立地を絞ってマンション購入を検討する場合、供給量が少ないため、そもそもそのエリアに新築マンションがないといった現象も昨今の新築マンション供給減の中ではよくあることです。

新築マンションは価格が高く、部屋は狭く、設備もチープで魅力がないうえ、供給数も少ないことから、代替的選択肢として中古マンション市場は大いに盛り上がり、リフォーム・リノベーション事業者も増加しています。

住宅ローンと別途でリノベーション費用を現金で用意するか、信販系などの高金利・短期間ローンを利用せざるを得ないといった一昔前の状況から脱し、今となってはマンション購入費用+リノベーション費用セットでほぼ全ての金融機関で一本化ローンを組めるようにもなり、中古マンション市場は活況を呈しているわけです。

住宅市場において「日本は新築文化だ」などと言われ続けてきましたが、それは文化というようなものではなく「新築をたくさん造り、税制優遇などで買いやすくする国策があったから」そう見えていただけで、昨今の新築マンションのように供給が細ると、おのずと中古市場が活況を呈するわけです。

白い壁を備えたリビングルーム
写真=iStock.com/Martin Barraud
※写真はイメージです

「団塊世代向けの政策」を長い間変えられない

新築優遇策は、かつて戦後の高度経済成長期の圧倒的に住宅が足りない時代に、庶民の住宅ニーズを満たすためにできた政策の名残です。

当時は田舎に仕事がなく、実家を継がない次男坊以下は東京をはじめとする大都市部に出て仕事を求め、都市近郊に住宅を求めるという行動様式が主流だったためと、そもそも人口増加局面であったため住宅の絶対量が足りなかったという事情があったからです。

この新築優遇策は、本格的な少子化・高齢化・世帯数および人口減少局面に入る現在においても、長らく政治と強く結びついてきた業界団体の強い要望もあり、ある意味既得権益的な形でだらだらと続いているわけですが、それでもさすがにもうそんなに新築が売れる時代ではなくなりつつあります。理由は主に3つあります。

1つ目。ピーク時に160万戸、このところ年間90万戸程度で推移している全国の新築住宅着工戸数はやがて40~50万戸へと、ここからさらに半減していくでしょう。理由は単純で、上述した通りまず「そもそもそんなにニーズがないから」。

戦後の高度経済成長期を、労働と消費という2つの側面で支えてきたいわゆる団塊の世代(1947年~1949年生まれ)に比して現在の住宅購入ボリュームゾーン(30代中後半)の世代は、団塊世代の子供たちである団塊ジュニアよりもおよそ一回り下ですが、この世代は団塊世代の人口の半分程度。絶対的に需要が足りないのです。