人生100年時代の高齢世代に必須なのが「うつ」「認知症」対策。いずれも原因として動脈硬化や慢性炎症が大きく関わっている。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さんは「知り合いの編集者は筋トレで軽度認知症(MCI)から回復した。世界的に、運動の認知症予防・改善効果への関心が高まっている」という──。(第2回/全2回)

※本稿は、鎌田實『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

「筋活」がうつを予防して認知症のリスクを下げる

アルツハイマー病や、脳血管性認知症の原因となる動脈硬化は、慢性炎症がきっかけで起こることがわかってきました。

慢性炎症を防ぐ効果があることがわかっているのが運動です。運動は認知症の原因であるストレスや肥満を解消する効果があります。

スウェーデンのカロリンスカ医科大学の研究によると、筋活を行うことでうつ病を予防する科学的根拠が明らかになりました。

うつ傾向のある人は、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌量が少ない場合が多いのですが、その理由はセロトニンと拮抗きっこうするキヌレニンという悪玉物質が増えるからだといわれています。

筋肉を動かすと、このキヌレニンが分解されることがこの研究で明らかになりました。キヌレニンが分解されれば、相対的にセロトニンが多くなります。セロトニンが多くなれば、幸せを感じやすくなるため、ストレスが解消され、それが認知症の予防になるというわけです。

認知症を防ぐ「幅広歩行」と「ピッチ歩行」

ウォーキングを行うと認知症の予防によいことも、世界中の論文で明らかにされています。認知症予防のためには、ふつうのウォーキングでも十分効果がありますが、より認知症予防に特化した歩き方を考えてみました。

1つは幅広歩行。国立環境研究所の研究によると、歩幅が狭い人は広い人に比べ、認知機能低下のリスクが3倍以上になり、歩幅が狭い状態のまま年齢を重ねると認知症発症のリスクが2倍以上になることを明らかにしています。

認知症予防に効果的といわれる「幅広歩行」をする鎌田實さん
写真提供=エクスナレッジ
認知症予防に効果的といわれる「幅広歩行」をする鎌田實さん

もう1つは、ピッチ歩行。アメリカのオレゴン健康科学大学の研究グループによると、MCI(軽度認知障害)と診断された人は、健康な人に比べて歩行速度が毎年1秒あたり0.01秒遅くなり、また歩行速度の低下は、MCIと診断されるより平均で約12年前から表れることもわかりました。

そこで速く歩くためのピッチ歩行です。

「幅広歩行」「ピッチ歩行」の詳しいやり方は、拙著『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』を参照ください。