場面によって離陸方法を使い分けている

ちなみに、飛行機の離陸方法は2つあり、それによっても所要時間は異なります。

「スタンディングテイクオフ」は、滑走路のスタート位置で一度停止し、そこでブレーキを踏みながらエンジンの回転数を上げ、推進力が上がったところでブレーキ解除、一気に加速するという方法。

滑走路が雨や雪で濡れているときなどは、滑走距離が短く済むこの方法で出ることが多くあります。到着機の離脱を待って離陸する場合も、待ち時間が生じるので自然と「スタンディングテイクオフ」になります。

「ローリングテイクオフ」は、誘導路から滑走路に入ると、停止せずにそのまま機首を滑走方向に向け、加速して滑走に入るという方法です。一時停止を行なわないので、離陸にかかる時間は少なくて済みます。

写真=iStock.com/Yobab
※写真はイメージです

羽田の定時運航率はトップクラス、一方成田は…

飛行機の発着が、あらかじめ決められた発着枠(スロット)通りに進行していけば、すべての便が遅延なく、定時に離着陸できるはずです。しかし、実際は遅延がしばしば起きることは誰もが経験している通り。飛行機が遅れる理由の代表格は悪天候ですが、実際には、天候以外の理由で遅延することも頻繁にあります。

飛行機が予定した時刻通りに発着する度合いを「定時運航率」といいます。出発予定時刻の15分以内に出発した実績から測られますが、羽田は世界でもトップクラスの定時運航率を誇ります。一方、成田や那覇は定時運航率が低いことで知られています。

出発遅延の理由や性質によってデータの取り方も異なるようですが、成田の定時運航率が低い理由の1つは、過密スケジュールです。

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もちろん、羽田も過密といえますが、発着枠でいえば、羽田は滑走路4本で1時間90機、成田は滑走路2本で最大72機。いかにタイトであるかがわかるでしょう。そのゆえに、到着便が少しでも遅れると全体のやりくりに影響して、遅延が起こりがちになるのです。また、発着枠はあくまで理論値での計算なので、運航実態と合っていないのかもしれません。

もっとも、発着枠はすべての時間帯でギリギリまで埋まっているわけではなく、成田のピークは10時台と18時台。この時間帯の遅延を最小限に食い止め、その後の比較的いた時間帯で遅延の連鎖を解消することで、何とかやりくりしているという現実もあります。一方、羽田はそんな回復を行なう隙間もないほど、全時間帯に便が埋まっているのです。

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