航空機が安全かつ効率よく飛行できるよう、地上から指示しているのが航空管制官だ。一体どんな業務なのか。元航空管制官のタワーマンさんの著書『航空管制 知られざる最前線』(KAWADE夢新書)より、一部を紹介する――。
羽田空港で待機する飛行機
写真=iStock.com/Yongyuan Dai
※写真はイメージです

1機の離着陸にかかる時間は約90秒

羽田空港では1日約1300回、飛行機が離着陸しています。しかし、滑走路は4本しかありません。この4本の滑走路をいかに効率よく使い、飛んでいく飛行機、降りてくる飛行機を上手に“捌く”ことができるか、そこは管制官の腕しだいだといえます。

そもそも、成田や羽田など、日々混雑している空港では発着数の上限があらかじめ決められており、それ以上増やすことはできません。これを発着枠(スロット)と呼びます。

1機の飛行機が離着陸にかかる時間(滑走路をその機のために空けておく時間)は、約90秒です。離陸であれば、滑走路手前の停止線を越えて加速、離陸していくまで、だいたい60秒から90秒。着陸であれば、着地ポイントの約2キロメートル手前から、接地、減速して、機体が完全に滑走路手前の停止線から抜けるまで約90秒。これをもとに、1時間に発着できる便数の限界が物理的に決まります。

滑走路の「時刻表」はまさに秒単位

国土交通省では、混雑空港に発着枠を定めています。羽田は滑走路が4本で、トータルで1時間90枠。成田は滑走路が2本で基本は68枠、最大72枠。その決められた発着枠が、各航空会社の希望スケジュールに割りふられます。

あとは、その「時刻表」通りに、それぞれの飛行機が発着できるように誘導してあげるのが管制官の仕事……ではあるのですが、現実は時間通りにとはいきません。

飛行機の発着には、遅延がどうしても発生します。たとえば、飛行機Aの到着が遅れたことにより、あとから来るはずだった飛行機Bが追い越して、先に着陸するかもしれません。あるいは、飛行機Aの到着後に出る予定だった飛行機Cを先に出発させたほうが、効率がいいかもしれません。

秒単位の細かい調整を行ないながら、過密スケジュールをこなしていくのも管制官の仕事なのです。