大空港では「自分の担当以外」も注視

地上管制の指示に従って滑走路まで移動した出発機は、無線の周波数を滑走路担当の飛行場管制に切り替えて、離陸許可を待ちます。上空から着陸態勢に入った到着機もまた、飛行場管制と交信しながら、着陸許可を待ちます。

滑走路担当の管制官は、滑走路周辺の安全を確認し、出発機と到着機の間隔を監視しながら、安全かつ効率的に離着陸できるように指示、許可、情報提供を行なうのが仕事です。

滑走路が1本しかない空港であれば、自分が担当する滑走路の“出入り”だけを見ていればよいのですが、羽田や成田のように複数の滑走路がある場合は、他者が担当する滑走路の交通状況も把握しながら調整を行なう必要があります。

たとえば、自分の担当する滑走路から先に出発機を出したほうがよいのか、それとも別の滑走路で待機中の出発機を先に出したほうが、その後の運用がスムーズにいくのか――ということを、管制官同士で調整しながら決めていきます。つまり、自分の滑走路だけを気にしていればよいというわけではないのです。

情報を得るため2つの目と耳をフル稼働

そのため、管制官は常に右耳と左耳、両方を使って情報を得ています。片方の耳は、パイロットと交信するためのイヤホンでふさがります。

空いているもう片方の耳は、管制塔内部で聞こえる声や音の認知に使います。パイロットと交信しながら、もう片方の耳で、「今、管制塔のなかでどんなやりとりがされているのか」「ほかの管制官がどんな指示を出しているのか」を“盗み聞き”しながら、必要な情報をインプットするわけです。

耳だけではなく、もちろん目もフル稼働します。まず、いちばん大事なことは管制塔から外を見て、実機の存在を継続的に把握することです。

次に、目の前のディスプレイに表示されているレーダー画面を見ながら、管制官は空港周辺にいる航空機の便名、位置、高度、速度や動きを確認します。

さらに、別の画面には「運航票」が表示されています。運航票とは、飛行計画のうち必要最低限の情報を抽出した「各機の運航メモ」のようなもので、航空会社のコールサイン、機種、空港名、飛行経路、巡航高度などの基本情報が記載されています。