出世するよりもスタートアップで活躍したい

若手にとって管理職が「罰ゲーム」になると、組織・会社の「次世代リーダー」が育ちにくくなるという問題が生まれます。次世代リーダーの育成は、企業の「人」に関わる課題の中で、最も大きな部類のものです。

小林祐児『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書)

例えばHR総研の実施している企業調査(人事の課題とキャリアに関する調査)では、どの企業規模でも「次世代リーダー育成」が、直面している課題の断トツ最上位です。少し先の「3〜5年後の課題」でも同じです。他の多くの調査でも同様の傾向が見られ、幹部層候補や次の経営リーダーの育成は、近年の日本企業が抱える差し迫った問題と言えるでしょう。

さらにここ数年、安定した大手企業から優秀な若手が続々と辞めている、という話をよく耳にします。「うちは優秀な若手から辞めていくんですよ」という話が、そこかしこで聞かれます。安定企業で将来有望とされていたキラキラした若手が、スタートアップ企業などに転職していくのです。

ベンチャーキャピタルの発達によって、スタートアップ企業が徐々に高待遇化してきたこともあるでしょう。管理職になる人が減り、一般社員との給料の差がなくなり、「タイパ」も悪くなれば、その会社で出世するインセンティブが下がりますので、早めに辞めてしまう若手が増えて当然です。年功的な賃金のフラット化が早期離職につながることは、すでにいくつかの実証研究でも示されてきています(※3)

20年も会社に奉仕した挙げ句に大した給与も貰えず、部下とのコミュニケーションで苦労ばかりする環境よりも、同年代の仲間たちと切磋琢磨せっさたくましているスタートアップ企業のほうが魅力的に映るのは仕方のないことでしょう。

(※3)「賃金プロファイルのフラット化と若年労働者の早期離職」村田啓子(首都大学東京)/堀雅博(一橋大学)RIETI Discussion Paper Series 19-J-028

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