働き方改革により会社の「ホワイト化」が進んでいる。外資系企業で産業医として年間1000人以上と面談をしている武神健之さんは「若手社員への理不尽な要求や過重労働が減る一方で、中間管理職が犠牲になっている印象がある。中間管理職が過剰なストレスを抱えていても全く不思議ではない」という――。
消沈するビジネスウーマン
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10年以上外資系IT企業に勤めていたAさん

こんにちは。産業医の武神です。

毎月100件近くの産業医面談を行なっていますが、中間管理職社員との産業医面談も少なくありません。彼・彼女らと話していると、若手社員や年配社員たち同様の不安やストレスや悩みに加えて、中間管理職特有のものも感じます。

今月は産業医が感じた中間管理職特有の不安とストレスについて書かせていただきます。

Aさんは新卒から10年以上外資系IT企業に勤める女性でした。同僚に産業医面談を勧められて私の面談に来られた時は、睡眠障害のほか、食欲低下、朝の憂鬱ゆううつ気分、集中力の低下(考えがまとまらない)など複数の症状があり、すぐに医療受診とそこで休職の相談をすることをお願いしました。

経験豊富な部下が退職して仕事量が増加

Aさんの話をまとめると、2年ほど前に部下の人数が5人から4人となった。1年前には4人中一番の経験者が退職した。残った3人中2人は非管理職のため残業に制限があり、退職した人たちの仕事を自分でもカバーすることとなった。新たな仕事が発生した時も、疲労がたまっている部下たちにお願いすることはできず、また、自分は経験があるため部下に教えるよりも自分がやってしまったほうが早いからと、自分でやってしまうことが多かったとのことでした。次第に趣味や気分転換の時間は無くなってしまったともおっしゃっていました。

Aさんは昨年末に上司より新たな人をチームに雇う計画はないことを言われ、年明けから次第に食欲がなくなり、3カ月前から睡眠がおかしい日が増えてきたようです。この頃から夫には心配されていたけれど、忙しくて医者に行く時間が取れず働いていたそうです。先週心配した同僚に産業医面談を勧められ、面談にきたとのことでした。

医療機関を受診した結果、Aさんはすぐに休職となりました。現在Aさんは内服治療をしながら休職中です。1年以上も我慢して頑張ってきたことを考えると、まだまだ休職は続くと思われます。