優秀な社員が辞めていく職場にはどんな特徴があるのか。関西大学の藤田政博教授の著書『リーダーのための【最新】認知バイアスの科学』(秀和システム)から、社員のやる気を削ぐダメな上司・ダメな職場の共通点を紹介する――。
日本人男性ビジネスマン
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社員のモチベーションを下げる「上司のバイアス」

ポピュラーなバイアスとして、一貫性バイアスも挙げられます。これはリーダーとなる方であれば、気をつける必要のあるバイアスの一つです。

これは「人の行動の傾向や、その人の内側にある考え方などは、常に変わらずに存在する」と感じるというバイアスです。

たとえば、普段から「だらしがない」と思っている部下がいて、その部下が会社に遅れてきたら「あいつはいつもだらしないからな」と判断するとき、このバイアスの影響を受けているかもしれません。

「だらしがない」という内的要因が、その部下にあって、いつもその影響を受けて行動すると考えるバイアスがあると、このような判断になるでしょう。

本当は事故で電車が遅れてしまい、やむを得ず遅刻してきたのかもしれません。しかし、そういったことを考慮せずに、さっと判断してしまうのです。

多忙で、一つ一つのことを考える心の「リソース」がないときほど、陥りそうなバイアスと言えます。簡単に言えば「十分に検討する余裕がない」とでも言いましょうか。

性格と行動を結び付けて考える一貫性バイアス

「個人には性格というものがあって、いつもその性格に従って行動するものだ」と思っていると、それが一貫性バイアスとなり得ます。

この考えは「性格が変わらない限り、行動は変わらないのだ」という考えにもつながります。だから私たちは、自分や他者の性格を知りたいと思うのでしょう。

一貫性バイアスにとらわれると、柔軟な思考が失われます。先の例でいえば、上司は「この部下は今日なんで遅れたのかな?」と部下の様子を観察したり考えたりせずに「だらしがない性格」が原因と考えて、それ以上は考えなくなるのです。

なぜなら、逐一「今回どうしてあの人はああいう行動を取ったのか」と考えるより「あの人はああいう性格だから」として終わりにしたほうが楽だからです。

一貫性バイアスは、状況の力を無視する方向に働きます。

「人の行動は(結構)状況で決まる」というのが社会心理学の考え方ですが、それと反するのが一貫性バイアスです。

もちろん、人の行動は状況だけで決まるわけではありません。正確には「状況とその人個人の要因で決まる」と言えます。

いずれにしろ、状況の影響の大きさを強調するのが社会心理学の考え方です。