成功は自分のおかげ、失敗は部下のせいと「自然に」考えてしまう
一貫性バイアスで、会社が直ちに危機に陥ることはないと思いますが、人事評価という点では影響を考慮する必要があります。
同じように、リーダーが囚われてしまうと、人事評価などで組織として影響が出るのが自己奉仕バイアスです。
セルフサービングバイアスとも言いますが、要するに「よい結果が起きたのは自分のおかげ」「悪い結果が起きたのは自分以外のせい」と物事の原因を認識してしまうバイアスです。
私たちは誰でもしていることですが、リーダーや社長が仕事面でおこなうと、影響が組織全体に広がります。
このバイアスに囚われると「うまくいったときは自分の能力や自分の努力のおかげで、悪いことが起きたときは外的な状況や他者の行動が悪かったから」となってしまいます。
つまり、向こうに原因があるとか、相手が悪かったからと考えるようになるのです。
これに、本書(第3章)でご紹介する「基本的帰属の誤り」が加わると「悪いことが起きたときは他者の能力がなかったから」と考えてしまう可能性が出てきます。
謝罪会見で「人のせい」にするダメな経営者のアタマの中
日本では、企業の不祥事などが起きて大きな問題になった際、トップの謝罪会見がおこなわれることがよくあります。
多くの場合、ことのなりゆきを幅広い対象者に説明して、納得を得ます。世間をお騒がせした場合、企業のトップがそれを沈静化するべく取られる、重要なコミュニケーションの一つです。
しかし、謝罪のための記者会見なのに、十分その機能を果たしていないなと思われる会見も、ときにおこなわれることがあります。
はっきりは言わないにしても、謝罪することが期待されている会見の当事者の言葉の端々から「このような悪いことが起きたのは、まわりのせい・状況のせいなのだ……」という叫びが聞こえてくるような場合です。
はたからは「失敗を人のせいにして……」と見えるのですが、じつは発言している本人は「客観的に考えてそう見える」と、本気で考えているのです。その原因が自己奉仕バイアスです。
せっかく会見を開いても、責任回避と思われてしまっては、見ている人たちも納得せず、謝罪会見を開いた目的が達成されなくなってしまいます。
「何のために謝っているのか」をよく考える
納得してもらうという意味では、ミスした部下と一緒に、得意先に上司が謝りに行くということもあります。
このような場合、上司が自己奉仕バイアスに陥っていたら「この状況が起きたのは部下のせいだ」と考え、部下を得意先と一緒に責めてしまうおそれがあります。そうでなければ「私の管理不足、指導不足でした」と得意先に謝ることもできます。