帰宅後も夜中まで仕事をするようになり……

1年前に赴任してきた上司とは相性が良くなかった。

業務過多で大変な中、上司に相談できず、ちゃんとやらないと排除されるとおびえ頑張るしかなかった。チームへの責任感、他人に迷惑をかけられないという気持ち、仕事のためにしていた自己啓発、プロフェッショナルとしての意識などで自分を奮い立たせてやってきたが、安全安心が保障された環境ではなく、つらくなっても誰にも弱音を吐けなかった。

自分の性格的に、迷惑になるから人に頼ってはいけない、他人をなかなか信用できず任せられないという気質もあり、周りに頼ることができなかった。また、こんなに頑張っているのに、よくやっていると自分で自分を褒める(認める)ことはなかった。

帰宅後も家からリモートで仕事をする日が次第に増え、夜中まで仕事をするようになった。次第に胃痛、不眠(寝つきが悪くなる、早朝に目が覚める)、食べなくなる(食べなくてもいいと思うようになる)、音楽やテレビの音がダメになる、ふと涙が出て止まらなくなるなどの症状が出始めた。妻が医療受診を勧めてくれたが忙しくてできず、上司に産業医面談を予約したからと言われ受けた産業医面談で、初めて自分が病的な状態になっていることを知った……。

残業
写真=iStock.com/comzeal
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今週頑張っても、来週の業務はなくならない

私は産業医としてクライエント企業で管理職研修や、社外での講演をさせていただくことがあります。部下のマネジメント的な内容を管理職の方々にすると、一番多いコメントは、「そんなことわかっている。そんなことより、俺たち(今日受講している中間管理職)のストレスこそ、どうにかしてくれよ」です。

真面目な人、責任感の強い人ほどこう言います。とてもわかります。人は自分に余裕がない時は他人に優しくできません。部下の心と体の健康を配慮するマネジメントなんてできません。

では、中間管理職の人々はこの状況にどのように対処すればいいのでしょうか。

残念ながら、私にもこの状況の打開策はわからず、産業医としての処方箋はありません。

ただ言えるのは、中間管理職に委ねられる業務は、常にたくさんあるということです。疲労がたまっていたり体調が悪かったりする中、今日頑張って終わらせても明日は明日でたくさんの業務があります。今週頑張っても今月頑張っても、来週来月の業務はなくなりません。