企業の安全配慮義務は管理職にも適用される
私は産業医として、管理職は若手(非管理職)のように残業に関する規制がないと、思い込んでいる(思い込まされている)中間管理職たちをたくさん見てきました。私の理解では、これはyesでもあり、noでもあります。
残業代に関しては労働基準法で定められていますが、管理監督者に対しては、労働時間、休憩および休日に関する規定が適用されないとされています。しかし、管理監督者とは、単なる役職や肩書だけではなく、実質的な管理監督権限を有し、経営者と同等の待遇や権限を持つ者とも定義されており、多くの中間管理職が管理監督者に該当するかはかなり疑問です。
また、企業が持つ社員への安全配慮義務は労働契約法に定められており、これはすべての労働者に対して適用されています。使用者(会社)には管理職と非管理職の区別なく、労働者の安全と健康を確保する責任があるとされています。
ですので、残業代の視点からは管理監督者扱いされているとしても、安全配慮義務の視点からは、中間管理職の方々の多すぎる残業時間は正当化される理由はないのです。残業代は出ないとしても、労働時間管理は非管理職と同等であるべきなのです。
中間管理職は「犠牲者」になっている
現在の、中間管理職にしわ寄せが重くのしかかっている現状は、決して個々の中間管理職のやる気が足りないのではなく、能力不足でもありません。中間管理職は犠牲者とも言えるでしょう。ビジネス(会社の業務)での、もしかすると日本全体での不具合なのかもしれません。そうであれば、その解決は自分の上長に委ねてしまうことを産業医としては提案します。
そして産業医としては、中間管理職の方こそ、自分自身を仕事から「区切る」ことをしていただきたいと思います。
毎日仕事とプライベートの時間をしっかりと区切る。1日が終わったら短時間でもいいから気分転換をして緊張感を解きよく眠れるようにする。週末も仕事ざんまいになるのではなく、どちらか1日は必ず休む。定期的な有給休暇で体にたまった疲労を癒やす、心にたまったストレスを発散する……。