日本の労働者はいつでも理由なく有給休暇を取得できる。しかし、日本人の有給取得率はほかの国と比べてとても低い。ビジネスコンサルタントの新田龍さんは「上司が有休取得を拒否するのは違法だが、罰則が抑止力になっていない。そもそも日本には有休をとりにくい構造的な問題がある」という――。(前編/全2回)
世界一、休みに無頓着な日本人
あなたは、自分自身の有給休暇があと何日残っているか、即答できるだろうか。
少々古いデータとなり恐縮だが、オンライン旅行サイトを運営する「エクスペディア・ジャパン」が、世界26カ国を対象に実施した「有給休暇の国際比較調査(2015年)」によると、日本人が「自分自身の有休支給日数を知らない」と回答した割合はなんと全体の過半数の「53%」。他国を大きく引き離して堂々の第1位(ワースト?)を記録した。
さらには、「有休取得に罪悪感を感じる」と回答した人の割合もまた世界1位(これもワースト?)であった。それにもかかわらず、「休み不足を感じている人の割合」は相対的に低いという、おそらく諸外国では考えられないであろう、「日本人は世界で一番『休みに無頓着』である」実態が明らかとなっている。
有給取得率は「最下位」か「下から2番目」
「日本人はなかなか休まない/休めない」とのイメージは長きにわたって定着しているが、これは決して印象だけに留まるものではない。「有給休暇の国際比較調査」は毎年継続しているが、過去からの推移を見返しても、わが国の有休取得率は調査対象国中、決まって「最下位」もしくは「下から2番目」が定位置なのだ。
ではなぜ、わが国ではここまで徹底的に有休取得率が低いままなのだろうか。
それには、働く人のマインドと組織文化面、そして法制面に雇用慣行面といった複数の原因が存在しており、しかもそれぞれが複雑に絡み合っていることが考えられる。単に有休取得を法律で義務化するだけでは簡単に解消しない根深い問題がそこにはあるのだ。
では、それら複数の原因について詳しく解説していこう。