休暇を取る=「怠け者」「迷惑がかかる」

① 働く人のマインドと組織文化面

働き方改革の広がりとコロナ禍を経て、ようやくわれわれは「体調が悪いので休みます」と堂々と表明できるようになった。しかし逆に言えば、これまでは「体調が少々悪かろうが、会社には出社して仕事をする姿勢を示さなければならない」ものであったということだ。なにしろ、市販風邪薬のキャッチコピーが「風邪でも絶対に休めないあなたへ」だったのだから。

わが国では長時間労働が美徳とされる風潮が強く、休暇を取る=「怠け者」と見なされる傾向があった。また、職場では各々が相互に助け合いながら仕事を進めていくスタイルゆえにチームワークが重視されるため、個人が平日に有休を取得することで他のメンバーにその分の業務負担がかかることを避けようとする心理が働く。

これらが複合的に作用し、上司はもちろん周囲のメンバーも誰もが有休をとらないので、「休まない」ことが同調圧力として作用し、有休取得に対して心理的な抵抗感が大幅に上がってしまうことになる。これらがまず心理的な要因だ。

実際、厚生労働省の令和3年度「『仕事と生活の調和』の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査」によると、年次有給休暇取得に「ためらいを感じる」と回答した割合は13.8%、「ややためらいを感じる」は31.7%で、合わせて45.5%、約半数の労働者が有休取得に心理的抵抗感を抱いていることが明らかになっている。

その理由のトップ3も「周囲に迷惑がかかると感じる」58.5%、「後で多忙になる」37.6%、「職場の雰囲気で取得しづらい」25.2%と、わが国の職場事情を生々しく反映したものとなっている。

有休をとらせない上司は間違っている

次に組織文化面でのボトルネックとして、以前より問題視され、ネット上でもしばしば話題になる「会社(上司)が有休をとらせてくれない」事象が挙げられる。

「有休を申請したら、『今は人手が足りないからダメ』と拒否された」「有休取得理由を尋ねられ、私用と回答したら『この忙しい時に』と嫌な顔をされた」といった相談はよく目にするが、多くの読者諸氏ならご存じのとおり、有休の取得は労働者の権利であり、取得に際して上司や会社の許可も承認も不要だ。