有休取得理由はすべて「私用」でいい
それどころか、本来は取得理由を細かく申告する必要さえない。もちろん、取得理由が「私用」であっても何ら問題はないのだ(※)。
※「その労働者にしかできない業務があり、期日が迫っているなどの事情がある」「繁忙期や決算期などで今の時期に休暇を取られると多大な支障が出る」といった、業務に著しい支障を来す場合のみ、会社側には「時季変更権」が認められ、有休取得時期の変更を求めることはできる決まりになっている。ただ、求められるのはあくまで「時期変更」だけであり、有休取得を「拒否」することはできない。
しかし多くの企業では、就業規則等で「有休取得に際して上司や会社側の許可もしくは承認が必要」と明記されている場合が多く、それが取得の心理的ハードルとなり、取得の自由度が低くなる要因となっている。
海外にあって日本にない「有給病気休暇」
② 法制面
人事評価への影響や業務負荷、心理的要因などから「有休取得にためらいがある」以外の理由で有休を意図的に取得しないケースがあるとすれば、この「法制面」に原因があるものと考えられる。その中でももっとも影響が大きいと考えられるのは「シックリーブ」の有無だろう。
「シックリーブ」とは「有給の病気休暇」のこと。労働者が業務外の健康上の理由で仕事を休む際に使うことができ、休んでいる間の賃金は補償される特別休暇の一種だ。
世界的には大多数の国と地域(少なくとも145カ国)で、何らかの形で設けられている有給病気休暇だが、日本には法律上、有給病気休暇の規定は存在しない。「ノーワークノーペイ」の原則に従い、病気や怪我を理由に仕事を休んだ場合、その日の給与は支払われないことが一般的(※)なのだ。
※国家公務員においては、「人事院規則一五―一四」(職員の勤務時間、休日及び休暇)の第21条で病気休暇について定められており、有給での病気休暇取得が可能。一方、民間企業では病気休暇を設定しているケース自体が少数派である。
しかし、誰でも風邪はひくし、家族の急な病気や怪我等で病院に付き添わなければならなかったり、子供が小さいときは1日中看護をしなければならなかったりするケースもあるだろう。そんな不測の事態のために有休を「病欠用に残しておかなければならない」心理が働くが故に、消化率が低くなることが考えられる。
昨今はスタートアップ企業を中心に、病気休暇を有給にする企業も増えてきているが、全体から見ればまだまだ少数派だ。厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」によると、民間企業で病気休暇を導入済なのは全体の22.7%。それも大企業が中心だ。
さらに、病気休暇制度がある企業のうち、有給扱いにしている企業は30.4%。すなわち、「有給の病気休暇制度」がある民間企業は全体のわずか7%程度ということになる。