管理職になりメンタル不調に陥る女性には、どんな傾向があるのか。精神科医で産業医の井上智介さんは「自己評価が低く、周りから評価されても『本当は能力が低いのに、周りをだましてしまっているのではないか』と罪悪感を持ったり、『いずれ能力不足であることがバレるのではないか』と不安にかられたりしてしまう『インポスター症候群』に陥るのは女性の方が多い。そしてこうした人が、管理職になったことで大きなストレスを抱えるようになり、うつ症状を発症することがある」という――。
管理職になったばかりの女性が陥るメンタル不調
毎年、ちょうど今ごろの7月、8月や、年末から年明けごろ、慢性的な疲労感や不眠、食欲不振などのうつ症状を訴える女性が目立つようになります。話をよく聞くと、春の異動や秋の異動で初めて管理職になったというケースが少なくありません。
「大した能力があるわけでもないのに、周りから過大評価されて管理職になってしまった」「周りからの期待に応えられていない気がする」「管理職としてチームを引っ張っていく自信がない」など、与えられたポストに自分の能力が追い付いていないのではないかという不安感が強く、それが大きなストレスとなって、うつ症状につながっているのです。
周囲からの期待をプラスに受け止められれば、成長につなげられますが、マイナスに受け止めると、不安が大きくなります。そもそも能力があるから抜擢されたわけですから、はたから見れば「その波にのって活躍したらいいのに」と思うのですが、周りの評価と自分自身の評価にギャップを感じて、不安が大きくなってしまうわけです。
周りの評価を素直に信じられない
本当は高い能力を持っているのに、自己評価が低いために、周りから評価をされても素直に信じることができず、「本当は能力が低いのに、周りをだましてしまっているのではないか」と罪悪感を持ったり、「いずれ能力不足であることがバレるのではないか」と不安にかられたりしてしまう。こうした、能力や実力があるにもかかわらず、自分を過小評価してしまう心理傾向は「インポスター症候群」と呼ばれており、周りをだましているという意識を持つので、「詐欺師」を意味する「インポスター」という名前がついています。