若手社員はなぜすぐに会社を辞めるのか。組織開発コンサルタントの仁科雅朋さんは「私が主宰している『グチ活』で本音を聞いてみると、上司からの指示や仕事のやり方に不満があるケースがみられた」という――。
会議中の若いビジネスマン
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うつ病を抱えながらようやく内定をとった大学生

ある時、友人から息子に就職活動のアドバイスをしてほしいとの相談を受けました。その後、彼の息子と日時を決めて待ち合わせました。初対面の田中君(仮称)はさわやかな挨拶をする好青年です。

彼の話を聞いていると、コロナ禍で大学に入り、前半の授業はほぼリモートだったようです。コロナが収束して、改めて大学に行ってみると、すでにクラスの輪ができていて、出遅れた彼は馴染なじめずに、軽いうつ病を発症したとのことでした。また緊張すると手が震えてしまうなどの悩みも聞き、私なりの就活へのアドバイスをしました。

一方、こちらも彼からSNSの最新状況や進化したゲームの話などが聞けて、とても勉強になりました。初対面にもかかわらず、彼との時間は世代を超えた感覚でした。気づけばすでに5時間が経過していました。

その後、4年生も後半になってから、ようやく希望のIT企業から内定が出たとの連絡が入り、友人と3人で就職祝いをすることになりました。

「どんな将来像を描いているの?」に衝撃の返答が…

当日の宴席で、友人はとても喜んでいるようでした。しばらく会話が続いた後に、私が田中君に「どんな将来像を描いているの?」と質問をしたところ、こんな答えが返ってきたのです。

「そうですね、3年くらいで違う会社に転職をしようと思ってます」
「えっ」

友人は絶句し、思わず息子を二度見。

私も「はぁ?」という感じで、しばしの沈黙。

本人は何も悪びれた様子はありません。友人は何か言いたげでしたが、それ以上突っ込まずにその日を終えました。

田中君はいわゆる「Z世代」に当たります。Z世代とは1990年代の半ばから2010年代前半に生まれた世代で、現在の26歳以下が該当します。

生まれた当時はWindows95が発売されており、インターネットが普及し始めました。物心ついたころには、スマートフォンを持っており、デジタルネイティブで、SNSにどっぷりつかる姿は、「SNSの住民」と表現されます。

一方、日本経済はバブルが崩壊し、失われた30年という低迷期で人生を過ごしてきました。東日本大震災やリーマンショックを経験し、将来不安を抱えながら、生きてきた世代です。