入社後すぐに会社を辞める新入社員にはどんな共通点があるのか。外資系企業で産業医として年間1000人以上と面談をしている武神健之さんは「上司や同僚に諦められているケースが増えている。もう少し事前に考えられなかったのか、もう少しの期間頑張れば見えてくるものがあるのではないか、と思わされる理由が多いからではないか」という――。
新入社員
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入社1年目としては“よくある働き方”だったA君

こんにちは。産業医の武神です。

コロナ禍の約3年間に新入社員たちとの産業医面談で多かった相談は、仕事量が多すぎて大変だとか、先輩たちが優しくないなど、ネガティブな内容ではありませんでした。むしろ社会人になるにあたって抱いていた期待やエネルギーがコロナ禍のため不完全燃焼……。そんな声が多いのが印象的でした。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

ポストコロナの新入社員たちはどうでしょうか。今回は、入社後すぐ(2年以内)にやめる新入社員の実態について考えてみたいと思います。

A君が初めて産業医面談に来たのは、入社して5カ月ほどたったころ、月の残業時間が80時間を超えたための長時間労働面談でした。

毎日8時前に出社し退社は21~22時頃で、この会社における入社1年目社員らしい生活を送っていました。多少の疲れはあるものの食事と睡眠はしっかりできており、疲労が蓄積しているとまでは言えない状態でしたが、どこか晴れない顔をしていたため、残りの面談時間で“雑談”をしました。

その中で分かったことは、仕事は大変だけれども日々学びになっている、だんだん分かってくることが楽しい、先輩や上司もいい人たちばかりで人間関係のストレスもほぼない。しかし、残業が多いこの働き方に、違和感を持っているとのことでした。

残業時間は3つに分けて考える

私は、残業時間は3つに分けて考えることを産業医面談では社員に伝えています。

1つめは、入社/転職から間もなく、仕事に慣れていないために発生している残業時間。これは時間の経過とともに減ることが期待できる残業時間です。2つめは、業務過多、人員不足、職場の雰囲気(企業文化)などによる慢性的な残業時間で、残念ながら今後も減ることが期待できにくい残業時間です。3つめは、月末や四半期ごと、イベントに伴う忙しさなどの業務特有の残業時間で、これはある程度予測がつきやすく、なくなりはしないものの適応しやすい残業時間です。

A君にもこの考えを説明すると、今はまだ1年目だから残業が多くあり、来年は減る期待ができることは理解できると言ってくれました。しかし、先輩たちを見ていると、8時前出社はないものの、21時まで働いている人達ばかりであるとのことでした。