入社1カ月で「自分には不向きな業務内容」と主張したBさん

違う会社のBさんは、人事があきれてしまったケースとして、私の中で印象に残っているケースです。

Bさんは学生時代にインターンした第1希望の部署での入社はかないませんでしたが、会社からの声掛けもあり他部署で入社しました。新人研修も終わり1カ月たった頃、部門長に「異動したい」と直談判し断られるとその場で号泣。人事経由で産業医面談となりました。

面談で泣きながら訴えた内容はこんな感じでした。元々やりたいと思っていた部署ではないため、どうしてもやる気が起こらず新しい業務を覚えられない。同期たちができるようになっていくのを見ていると自信喪失と自己嫌悪の気持ちになり、思い出してしまい夜眠れない。自分には不向きな業務内容だから元々希望していた部署に異動させてくれればやる気も出るだろうし、そうすればうまくいくはずだ……。

私は、実際に仕事を始めてまだ1カ月程度で向き不向きは決められるものではないこと。たとえ与えられた仕事が自分の本意ではなかったとしても、その仕事をやる意味や意義を新たに考えて頑張ってみることも、社会人としては必要なこと。睡眠がとれないことが日中の業務に影響があるのであれば、医療機関を受診し相談すること、などを伝えさせていただきました。

Bさんはその後も遅刻や欠勤があり、業務にも明らかに支障をきたしているようでした。そして数週間後、彼女は上司に「適応障害。症状が悪化する可能性があるため異動が望ましい」と記載された診断書を提出しました。私の声は彼女には全く響いていなかったようでした。

膝に手を置いて面談をする女性
写真=iStock.com/kazuma seki
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休職に入らず、そのまま退職していった

2回目の産業医面談では、主治医に勧められたものの内服薬は断ったことと、体調は前回よりも悪化しており、休職を考えるべき状態であることが確認できました。産業医面談の結果を受けた人事と部門は彼女に、このような診断書を提出したからといって異動できるわけではないこと、規則として1年たつまでは部署異動はできないこと、体調が悪いのであれば休職をすべきであることを説明しました。

最終的に彼女は休職に入らずそのまま退職したと後日人事に聞きました。

就活情報サイト「キャリタス」を運営するディスコが2月に実施した2023年春入社の社会人を対象に実施した「入社1年目社員のキャリア満足度調査」では、43%が転職活動中もしくは転職を検討中とのことです。また、パーソルキャリア「新卒入社直後のdoda登録動向」によると、転職サービス「doda(デューダ)」に4月に登録した新社会人の数が23年に過去最多を更新。調査を始めた11年と比べて約30倍になり、登録者全体の伸び率と比べても、新社会人の伸びが顕著だったとのことです。