Z世代の1日にテレビを見る時間はない
まず、需要の問題から詳しく見ていこう。再三再四の指摘で申し訳ないが、日本人の半数ちかくはNHK総合チャンネルを5分も見ていない。そして、この傾向はこれからますます強まる。なぜなら、テレビ世代の人口がどんどん減少し、Z世代が視聴人口の中心になっていくからだ。
Z世代とは生まれたときから、インターネットなどのデジタルメディアがあり、物心ついた時にはスマートフォンがあった世代だ。彼らは朝起きるとまずスマホを手に取り、SNSでニュースや天気予報などの情報を得る。テレビ世代のように、まずテレビのスイッチを入れ、新聞を広げる人は稀だ。
通勤・通学、昼食を食べる時間も、スマホでSNSを見たり、投稿したり、ゲームをしたり、YouTubeを見たりしている。テレビ世代は本や新聞を広げていたが、彼らはこういうことをまったくしない(テレビ世代も現在はしていない)。
夕方に帰宅して、パソコンやテレビにスイッチを入れるかもしれないが、テレビ世代とは違って、見るものは大体インターネットのコンテンツやYouTube、大手動画配信サービスだ。
とくに単身世帯は、放送コンテンツを見るとNHK受信料を払わなければならなくなるので、テレビ自体を買わないか、買うとしてもチューナーを内蔵していないものを買う。
「NHKにお金を出したくない」は無視されている
このように、Z世代の日常生活にNHKの放送が入り込む隙間はない。にもかかわらず、検討会の報告書の基本的な考えは、「テレビをもっていない人たちにもNHKの放送コンテンツを見てもらわなければならない。そのためにも、ネット配信をしなければならない。ただし、ネット配信を利用するため自らすすんで個人情報を入力して登録した人には、相応の負担を求める」というものだ。
これには唖然とする。「テレビをもっていない人たち」は、単にテレビをもっていないのではない。大部分の人々は、NHK受信料を払いたくないので、テレビを買わないのだ。さらに詳しくいえば、普通のチューナー付きのテレビを買いたいのだが、受信料を払いたくないので、わざわざチューナーなしのテレビを買っているのだ。不条理な放送法が契約の自由だけでなく、商品選択の自由まで奪っている。
この検討会は、そもそもZ世代はテレビ放送など必要としない、また、もっとも見ることが少ないNHK製コンテンツのためにお金を出す気などない、という現実に目を背けている。