ディズニーがコンテンツ産業の「帝王」であり続けられるのはなぜか。KUREYON代表の中澤一雄さんは「ディズニー本社のヒット作品はなくても、買収した子会社がヒット作を連発している。それはディズニーのM&A術が優れているからに他ならない」という――。

※本稿は、中澤一雄『ディズニーとマクドナルドに学んだ最強のマネジメント』(宝島社)の一部を再編集したものです。

香港のディズニーランド
写真=iStock.com/kimberrywood
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なぜライセンス・ビジネスでここまで成功できたか

ウォルト・ディズニー・ジャパンは、ウォルト・ディズニー・カンパニーの日本法人であり、ディズニーの主力商品である「コンテンツ」を扱う会社です。

ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ピクサー・アニメーション・スタジオなどをはじめとするさまざまなスタジオの作品の配給、アメリカ本社が所有するキャラクターのライセンスビジネスやディズニーチャンネルなどの配信などを手がけています。

ウォルト・ディズニー・カンパニーの最大の特徴は、そのコンテンツの持っている力とその価値を最大限に引き出す経営手法にあります。それによってウォルト・ディズニー・カンパニーは、ライセンス・ビジネスにおいて世界で最も成功した企業になったのです。

では、その経営手法についてこれから説明していきたいと思います。私がウォルト・ディズニー・ジャパンに在籍していた当時、アメリカのウォルト・ディズニー社は、以下の4つの部門に分かれていました。

① パーク部門(ディズニーランド)
② モーション・ピクチャー(映画)部門
③ テレビ部門(ABC、ESPN)
④ コンシューマープロダクツ(商品ライセンス)部門

ちなみに、ディズニーストアはコンシューマープロダクツ部門の管轄でした。

コンテンツ産業の帝王に

ディズニーは2023年には総売上約888億ドル、約13兆円もの売上を達成しました。このうち、テレビ部門ではディズニープラスのストリーミング・サービスが会員数1億5000万人を突破、Huluも4800万人もの会員数を誇ります。まさに時代に即したストリーミング・サービスで、巨大な売上を計上しているのです。

そして、モーション・ピクチャー部門では、2005年にウォルト・ディズニー・カンパニー最高経営責任者に就任したボブ・アイガーが驚くべき経営手腕を発揮し、2006年にはピクサー・アニメーション・スタジオを、2009年にはマーベル・コミックを、2012年にはルーカス・フィルムを、2018年には20世紀スタジオ(21世紀フォックス)を買収し、そのすべてをウォルト・ディズニー・カンパニーの子会社とするに至ったのです。

世界の名だたる映像制作会社・コンテンツ制作会社がディズニーの傘下に入ることとなりました。今や、ピクサー映画も、『スター・ウォーズ』も、『アベンジャーズ』も、すべてディズニーが所有するフランチャイズとなりました。

まさに、ウォルト・ディズニー・カンパニーはコンテンツ産業の帝王と呼ぶにふさわしい地位にまで上り詰めたのです。