受信料は放送インフラを維持するためのもの
拙著『NHK受信料の研究』(新潮新書)で述べたが、受信料の正体は、放送インフラの建設・維持費だ(第3章「NHKのGHQへの抵抗が生んだ受信料の矛盾」で詳しく解説している)。
テレビ放送をするためにはマイクロ波通信網を建設し、維持する必要があり、そのために受信料が必要だと占領期にNHK・通信官僚が主張した。GHQはNHKが受信料を取ることに反対していたので、これに抵抗するため口実が欲しかったのだ。
GHQはそのような放送インフラは国費を投入して建設し、NHKと民放、電電公社で共同利用すればいいと提案したが、NHK・通信官僚がそれを拒否した。あくまで受信料を取り続けたかったし、それによって放送インフラを建設すれば、民放に使わせずに済むからだ。まったくのエゴイズムだ。マイクロ波通信網は、電電公社が建設し、民放はそれを使ってキー局とローカル局をつないだ。
検討会の報告書を読むと、この占領期のエピソードを思い出す。というのも、ローカルのレベルで、NHKの放送インフラを民放にも開放し、共同利用する計画が持ち上がっているからだ。
ネットに移行すれば、放送インフラの利用に余裕ができるので、民放にも使わせようということだろう。民放ローカル局のほうは、もともと放送インフラが弱く、広告収入の減少でそれを改善する余力がない。
民放との共同利用はいいが、まずは規模縮小
受信料は法律で義務化されることで強制徴収されている点で税金のようなものだ。であるならNHKの放送インフラは、受信者・国民のものだともいえる。同じく公共の電波を使って公共の利益のために放送している民放(放送法ではそうなっている)と共同利用するのは望ましいことだ。
とはいえ、本来は、NHKが放送インフラを縮小し、統合整理し、あるいは売却し、コストを削減し、規模を縮小するのが筋だ。
これは地上波ローカル放送の話だが、同じことは衛星放送と国際放送のコンテンツをネットで流す計画においても検討されている。つまり、衛星放送と国外向け国際放送(国内向け国際放送もあるので区別している)でNHKが使用している衛星通信回線は、地上波放送と違って自前のものではなく、株式会社放送衛星システム(B-SAT)のものだが、ネットに移行すれば、この回線使用の利用が減少するのだから、そのコストも見直さなければならないということだ。