雑誌の廃刊・休刊が相次いでいる。その中で、週刊誌は部数を大幅に減らしながらも発行を続けている。なぜか。『MINKABU』編集長の鈴木聖也さんの著書『最近のウェブ、広告で読みにくくないですか?』(星海社新書)より、一部を紹介する――。
新聞や雑誌などが売られているキオスク
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです

「老人ホーム」と化しているウェブメディア

ウェブメディアが一般化し、出版社などで収益源として認められるようになっても、傍流という性質は本質的には変わらなかった。たしかに部署はできても、各部署のエースと呼ばれるような人はなかなか来なかった。とにかく人材がいないのである。

日本の大企業なんてそんなもんだろう。新規事業なんてくそくらえである。会社の未来のことを考えたら新規事業に人材を投入するべきだとしても、現状収益を上げている部署のリソースを簡単に明け渡すわけにはいかない。それが会社員というものであり、イノベーションのジレンマだ。

そんなこんなで、会社からやる気、実績、元気があるような人材はもらえず、「老人ホーム」と化しているウェブメディアは存在している。もしくはさまざまな事情でフルパワーで働けなくなってしまった「療養所」となっているところもある。

日本の大企業にはそういった部署はどこにでもある。追い出し部屋と化す会社もあるのだろうが、緩い風土の出版社などではそんなことはしない。しかしなぜあえてウェブメディアの部署で……。

いまだに「一太郎」を使う編集者

出版社や新聞社のコンテンツのIT化がこれほどまでに遅かった理由について、経済誌『プレジデント』の元編集長で作家の小倉健一氏は「一つは、ITに対する強烈な苦手意識が業界幹部にあったことだ」と指摘する。

フリーで活躍するライターは何歳になっても最新ITツールを使いこなす人が多い。若い編集者はどんどん新しいツールを活用していくので、それにキャッチアップしていかないと仕事を得られないからだ。一方で出版社の社員には、未だに「一太郎」を使っている編集者や記者が存在している。

私も数年前、定年間際の大手出版社社員に、現在多くのビジネスシーンで使われているグーグルの「スプレッドシート」の概念を説明するのに苦労したことがあった。クラウドの概念も校正機能も、意味がわからなかったようだ。