竹中平蔵が愕然としたテレビ局幹部の勉強不足
さて、小倉健一氏の指摘に、以前経済学者の竹中平蔵氏に取材したときのことを思い出した。竹中氏は小泉純一郎政権下の2005年~2006年に総務大臣を務めていた。竹中氏はテレビ局社長の「放送と通信の融合」に対する理解度の低さに愕然としたという。竹中氏はこう語る。「これからは放送と通信の融合の時代だと考え、キー局の社長全員と1対1で会いました。しかし、会ってみてわかったのは、放送と通信の融合についてちゃんと理解できている人は、ある一人の社長を除いて誰もいませんでした。後から考えると、それもそうだなと思います。キー局の社長とは新聞社出身の方が務めるものだったのですね。当然放送に対する理解度も十分ではないのです」
「そもそも放送の強みとは1対多数に対して情報を送ることです。かつては、それができるのは電波しかなかったのです。一方で通信は1対1で情報交換するものでしたが、インターネット技術の発展により1対多数というのができるようになりました。
これに対する対応が早かったのがアメリカで、だからこそネットフリックスなどが誕生したのです。私も総務大臣当時、NHKにネットでの配信を提案しましたが、『私たちには公共性があるんだ』と全部拒まれました。
だからこそ今のテレビ局の惨状には『自業自得』な部分が大きいと感じています」(竹中平蔵「テレビ局から電波を取り上げてもいい」私の提言を完全無視したNHK・民放…「国民のニーズにあった電波の利用方法を」2024年6月24日『みんかぶマガジン』)
100万部→10万部程度になった週刊誌
テレビ局も出版・新聞と様子が似ていたのかもしれない。
しかし、ウェブを自ら希望して配属された若手社員もいる。彼らは行き場を失った社員たちの管理も任された。ただ、デジタル部署にいる中高年人材にはPVを稼ぐ能力はないことの方が多かったようだ。もともと問題を抱えていたためにデジタル部署に送られた社員がデジタル部署でも問題を起こし、「もう行かせられる部署がない」と困っているという話を、とあるウェブメディアの編集長から聞いたことがある。やる気・自信を失った年配社員にどう接すればいいのか、色々と悩みは尽きないようだ。
一方で、ウェブメディアの数字を稼ぐ業務は、転職組や業務委託など「傭兵部隊」に頼っている。
繰り返しになるが、出版社における全てのウェブメディアが二線級の扱いというわけではない。だが、大きな出版社ほど幹部が紙の可能性を最後まで信じている、紙至上主義なのは事実だ。
大手週刊誌などはかつて、発行部数で100万部を軽く超えていた。だがそこから発行部数は下がり続けている。現在の実売は10~12万部という感じだ。