AI、メタバース分野でも存在感を示している

そんなことはありません。たとえばマイクロソフト社は、23年1月に人工知能チャットボットのチャットGPT(ChatGPT)を、同社の検索サービスBing(以下、ビングと表記)に融合させた「新しいビング」のサービスを開始しました。検索サービスでグーグルの後塵こうじんを拝していたビングですが、いち早くAIを取り込むことで、“打倒グーグル”を目指して激しく追い上げようとしています。

21年10月に、社名を「メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms, Inc.)」に変更したSNSの老舗フェイスブック(Facebook)は、社名通りメタバースに大きくかじを切ろうとしています。メタバースとはコンピュータ内に構築された仮想空間やそのサービスのことで、ある調査によればその市場規模は2025年には50兆円に、2030年にはなんと1千兆円もの規模になると予測されています。

これらのAIやメタバースの分野でも、ビッグ・テックのGAFAMが大きな存在感を示しているのです。コロナブーメラン効果による大規模リストラや減益という局面でも、GAFAMの現状やその目指すところを分析・考察・予測するのは、今後の世界経済を読み解く上で、これまで以上の重要さを持ってきているのです。

「冬の時代」たしかに成長率は落ちているが…

GAFAMがいかに巨大な企業かはいうまでもありませんが、しかし前述したように2023年にはコロナブーメラン効果によって、その業績にも陰りが見え隠れしてきました。23年初頭には、GAFAM各社の22年10~12月期の業績が発表されました(図表1)。

さらに過去4年間の売上高(図表2)を見ると、コロナ禍にもかかわらず各社ともに順調に売上を伸ばしているように見えます。

これがビッグ・テックの“コロナ特需”といわれるゆえんです。2010年代頃からテック企業に金が集まり始め、中でもGAFAMは群を抜いて業績を伸ばしてきました。

実際、売上高だけで見れば、GAFAM5社の合計はこの4年間で8千億~1兆5千億ドルへと推移しています。ところが、実際の各社の利益を見ると、22年から減収にはなっていないものの、その伸び、つまり成長率が落ちてきているのです。

そのため、この減益を「コロナブーメラン効果」と呼び、さらに「冬の時代」などという声も出始めています。「冬の時代」とは、すなわちGAFAMのブームが去り、各社の業績が低調になり、衰退に向かうのではないかという意味です。