人間の仕事はAIに取って代わられてしまうのか。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「一時的になくなる仕事は出てくるのは確実だ。しかしAIにも不得意なことはある。これから人間がやるべき仕事は『クリティカルシンキング』になるだろう」という――。

※本稿は、田中道昭『GAFAM+テスラ 帝国の存亡』(翔泳社)第8章「その他のGAFAMのライバルとなる企業」の一部を再編集したものです。

AIまたは人工知能とのチャットGPTチャット
写真=iStock.com/hirun
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GAFAMが常にトップの座にいるとは限らない

90年代後半からテック業界を牽引してきたGAFAMは、それぞれ基盤とする分野が異なっています。創業した時期も異なっており、第一線から退いた創業者も少なくありません。

たとえば、アップルを創業したスティーブ・ジョブズは、2011年に膵臓がんによって惜しくも56歳という若さで亡くなっています。そのジョブズと同じ年に生まれたビル・ゲイツは、マイクロソフトを創業して一大帝国を築きましたが、20年に同社の取締役を退任し、現在は実業家、慈善活動家として活動しています。

ジョブズやゲイツより10歳年下のジェフ・ベゾスは、アマゾンを創設して世界トップのネット小売店を作り上げましたが、21年にCEOを退任して取締役会長に就任すると、自ら設立したブルーオリジンで子どもの頃からの夢だった有人宇宙飛行事業に取り組んでいます。

各社の創業者の中にはすでに退任した者、亡くなった者などもいることからもわかるように、GAFAMも創業から20~50年近くも経過しています。その間、ずっと業界トップを走り続けてきたわけでもありません。

GAFAMはテック企業であるため、新しい技術や製品、サービスなどの登場によっては、トップの座から転落する可能性もあります。

実際、アップルのジョブズは、80年に創業したものの85年には業績不振からすべての業務を解任され、アップルを追い出されてしまいます。そのジョブズは96年、業績不振から請われてアップルに復帰し、2000年には再びCEOに返り咲き、以後アイポッド、アイフォーン、アイパッドと続けざまにヒット製品を出してアップルを見事に再生させています。

2カ月で1億人が使った「チャットGPT」

ビッグ・テックとはいっても、決して安泰ではいられないのです。そのビッグ・テックの存在を脅かすような技術が、22年11月に登場しました。チャットGPT(ChatGPT)です。

チャットGPTというのは、「人工知能チャットボット」と呼ばれ、「生成可能な事前学習済み変換器」と訳されるものです。原語では「Generative Pre-trainedTransformer」となっています。

22年11月にサービスを開始すると、わずか1週間でアクティブユーザー数が100万人を超え、2カ月で月間アクティブユーザー数1億人を突破するという、すさまじいまでのブームを巻き起こしています。

23年1月には、マイクロソフトが同社の検索サービスのビングに、このチャットGPTを融合させ、「新しいビング」のサービスをスタートすると、グーグルも23年3月末、会話形AIサービス「バード」をアメリカ、イギリスで公開しました。さらに4月には、アマゾンも生成AIの「ベッドロック(Bedrock)」を発表しています。

メタ・プラットフォームズは、マーク・ザッカーバーグCEOが23年2月28日付けの投稿で、「私たちはメタで、私たちの仕事をターボチャージするために、生成人工知能に焦点を当てた新しいトップレベルの製品グループを作成しています。私たちは企業全体で生成人工知能に取り組む多くのチームを、弊社のすべての製品にこのテクノロジーをめぐる楽しい経験を積むことに焦点を当てたグループにまとめることから始めます」と宣言しています。