自己実現の仕事「ライフワーク」

いわば生活のための仕事と、自己実現のための仕事――この2つはどちらがより偉くて高尚だというものではありません。人は生活の糧を得るため、家族を養うために働かなくてはなりません。その意味では前者は必要不可欠。この部分を抜かして理想を追い求めるのは本末転倒です。

ただ私は、人間がより幸福に生きるためには、後者の「ライフワーク」要素も非常に大切だと考えています。毎日「生活のために働かなきゃ……」と暗い気持ちで出勤するのと、「さあ、今日はどんな面白い仕事が待っているかな」と胸をワクワクさせながら朝起きるのでは、当然後者のほうが、人生の張り合いにつながります。

若い頃には「ライスワーク」をしていたけれど、年齢を重ねるうちに「ライフワーク」にシフトしていく人も多いでしょう。青年期は生きるために必死だったけど、そのうちに仕事にやりがいや生きがいを見出して、気づけば「ライフワーク」と「ライスワーク」が一体化していく……、これはある意味、理想的な働き方です。

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まずは、自分のしている「仕事」はどちらか理解する

その一方で、自分の仕事が「ライスワーク」なのか「ライフワーク」なのか、気づかないまま人生を過ごしていく人もいます。これはちょっと残念ですね。自分自身の人生を、自分でしっかり見つめていない、考えていないことになりますから。

ただし、そういう人も、だいたい50歳を過ぎたあたりで、自分が目を背けてきた事実に気づき始めます。「自分の生きてきた人生は何だったのか……」と、立ち止まり考える時期が訪れるのです。

仮に人生がすべて「ライスワーク」で占められていたとしても、そのおかげで生活を営むことができ、家族を養えてきたのなら、それはそれで立派な人生と言えます。ただ、長い人生、自分の時間と労力を傾け続ける以上、どうせなら「ライフワーク」を追い求めたい。そうなった時、50歳、60歳で人生を振り返り、「自分にとってのライフワークは何か」を探ったのでは遅いのです。