実際の決断は後回しでもいい

人生後半戦で徐々に「ライフワーク」にシフトしていく道もあります。両者をうまく組み合わせながら両立していく方法もあるでしょう。本業は「ライスワーク」だけど、副業は「ライフワーク」を楽しんでいる。または「ライフワーク」の起業を目指しながら、今は「ライスワーク」で起業資金を貯めているという人もいます。30代で副業を始め、「これで行ける!」と確信したタイミングで、早期退職制度を利用して転職や起業をした人もいます。もちろん本業にやりがいを感じているのならば、引き続き「副業」の幅を広げ、「兼業」にすることだってできるでしょう。

かつては「副業禁止!」が多くの企業で常識でしたが、今では推奨する企業も増えてきています。本業の他に1社、2社、3社と副業先を増やしていき、ついに10社を超えたところで独立して、フリーのコンサルタントになるようなケースも、決して珍しくなくなりました。

独立・転職・起業・フリーランス……、実際の決断は後からでも十分間に合います。今はまず、その前の準備運動から、始めてみてほしいのです。

オフィス街を歩くアジア系ビジネスマン
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「組織に属する」信仰の終焉

そうは言っても、いまだに「フリーランス」と「フリーター」の区別がついていない人や、「アルバイトやパートと何が違うの?」と大真面目に聞いてくる人も少なくありません。いかにこれまでの日本が、「企業に属して働くこと」を大前提とみなし、「企業に属さず、個人として働くこと」を少数派として断じてきたかがうかがい知れます。

今から10年ちょっと前の、2010年頃のことです。当時30代だった私の知人はフリーランスとして大活躍していました。依頼はひっきりなしで、かつ高報酬の仕事ばかりが舞い込む彼は、まだ30歳と若いにもかかわらず、すでに年間1800万円以上を稼ぐ、超高度人材フリーランスでした。世間的にはいわゆる“高額所得者”と呼ばれる立場だったと言えるでしょう。

ところが、その彼が結婚しようと相手のご両親に挨拶に行ったところ、「定職にもつかずにフラフラと。そんな地に足がついてない男に、大切な娘をやれるか!」と大叱責されたそうなのです。いかに「フリーランス」としての働き方が市民権を得ていないのかを実感したと、彼は肩を落として嘆息していました。

収入もあり、貯蓄もあり、将来に向けて資産運用もしている……、それなのに「組織」に属していないというだけで、世間的信用を得られない……。そんな時代が、日本に最近まではありました。