帝国ホテル(東京・千代田)のロビーでは、コーヒー1杯が2000円以上する。なぜこのような価格設定ができるのか。京都でイタリアンバルを営む亀山純一さんは「お客はコーヒーではなくブランドにお金を払っている。お客が満足するならば価格はいくらにでも設定することができる」という――。

※本稿は、亀山純一『繁盛する小飲食店のつくり方』(さくら舎)の一部を再編集したものです。

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「美味しい料理」だけではファンは増えない

美味しい料理を作ってお客様に食べていただく。飲食店とはそういうお店ではあるんですが、商品を売っていてもファンはなかなか作れません。

ではどうすれば飲食店にファンがつくのでしょうか?

その答えはストーリーを売ることです。

美味しい料理を作るのは当たり前で、その商品の価値をお客様にしっかりと伝える。これがストーリーを作ることであり、ファン化を加速させる手段です。

ラーメン1杯を売るにしてもそのラーメンを作るにあたっての経緯や店主の思いをきちんとお客様に伝える。これができるかどうかでお客様の再来店確率は変わってきます。

たとえばこんなストーリー。

脱サラをして一からラーメン屋を開業しようと決意したそのわけは、子供の頃に食べたあのラーメンの美味しさが忘れられなかったから。子供の頃、お父さんと2人で食べに行ったあのラーメンの味を再現したい。こってりブームの中でどこか忘れられてしまった、懐かしさを感じさせる王道の醤油ラーメン。

ラーメン1杯を売るにしてもこういったストーリーを使い、その背景の店主の思いをしっかりと伝えることができると、一度食べに行ってみようかなとなるお客様も多いですし、そのストーリーに共感が多ければファンになってくれるお客様も多くなります。

ラーメンチェーン「一蘭」が支持される理由

チェーン展開しているラーメン店でこのストーリーを上手に活用しているのは一蘭です。一蘭では、ひと席ごとに仕切りがあり、目の前のラーメンに集中するように店舗が設計されていて、厨房も見えなければ従業員の顔すら見ることができません。

そして隣の席との仕切りには一蘭のラーメンが出来上がるまでのストーリーが書かれています。

つまり戦略的にストーリーをお客様に見せ、ファン化を加速させようとしているのです。